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2023年6月5日…その日、アメリカの将来が決まる

From:ジム・リカーズ

ジム・リカーズは、ウォール街で40年の経験を持つ金融・経済の専門家。地政学に精通している彼は、地理的な条件から、軍事や外交、経済を分析することを得意とする。実際、米国における彼への信頼は非常に厚く、CNBC、ブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナルといった世界的なメディアに数多く出演し、政治問題や経済の動向について提言を求められてきた。さらに彼は、ホワイトハウス、CIA、国防総省の元顧問である。2008年にはリーマンショックの発生を予測し、CIAに対して助言を行っていた。彼のもう一つの肩書きは、5冊のベストセラー本の著者。その著書には『The New Case for Gold』(邦題:いますぐ金を買いなさい)や『The Death of Money』(邦題:ドル消滅)がある。政府機関が信頼を置いてきた彼の予測や提言は、きっとあなたの金融知識の向上、ひいては資産形成にお役立ていただけるだろう。

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米国一強の時代はいつまで続くだろうか?

今から2ヶ月後…この問いへのある程度の答えが見えてくるだろう。

なぜか?4月の中頃、米国は、債務と赤字の2点で大きな転換期を迎えるからだ。

この問題は、債務上限と、米国が債務不履行に陥る可能性のある悪名高い「Xデー」に関連している。

「一兆ドルコイン」は借金大国アメリカを救えるか?

出所:DonkeyHotey

米国財務省が発行できる債務の総額の上限を示す数値である。ただし、債務上限は、新たな債務を発行できないという意味ではない。

正しくは、債務の残高が上限に達した場合、新しく債務を発行することができないということだ。

現在の債務残高は31兆ドル以上で、その中には満期(返済期限)が4週間から30年までのものが存在する。財務省は、これらの古い債務を返済する度に新しい債務を発行することができるわけだ。ただし、総額を増やすことはできない。

例えば、今週200億ドルの債務が満期を迎えたとしよう。その場合、財務省は200億ドルの新しい債務を発行して総額を一定に保つことが可能だ。ただ、天井を破らずに300億ドルを発行することはできない。債務は今、天井に達している。

米国は赤字を垂れ流している状態だ。もし、財務省がより長期的な債務を抱えて、目先の債務を返す「ロールオーバー」(借金の繰り越し)しかできないのであれば、新たな赤字分の資金はどのように資金調達されるのだろうか。

財務省は、支払いを続けるために「特別措置」に頼らざるを得ない。そのために生み出された、アイデアが“一兆ドルコイン”というものだ。その仕組みは次の通りである。

無から有を造る 「現代の錬金術」

その仕組みは非常にシンプルだ。財務省は造幣局にプラチナ製コインの製造を依頼する。そして出来上がったコインを連邦準備制度理事会(FRB)に渡し、そのコインが1兆ドルの価値があると宣言するだけでいいわけだ。

(1オンスの硬貨と仮定すると、実際の市場価格は約1,000ドルである)。

FRBはコインを金庫に入れ、米国財務省の一般勘定に1兆ドルを信用創造する。こうして財務省は新たに印刷されたそのお金を好きなように使うことができるのだ。

ほぼ何もない所からドルを作り出せることから、「現代の錬金術」と言っても良いだろう。財務省は新たな債務を発行する必要がない。債務上限に違反することもない。素晴らしいトリックだと賞賛する人もいるだろう。

もちろん、この「1兆ドルコイン」が現実になったとしたら悲惨なことだ。コインの恣意的な評価によって、市場をコントロールするその様は詐欺そのもの。FRBが現金を供給しようとすれば、通貨供給量が極端に増加し、さらなるインフレを引き起こしかねない。FRBと財務省は歴史に残る笑いものになるだろう。

国民の信頼が土台になっている2つの機関にとって、それ致命的だ。このアイデアについてこれ以上を議論する価値がはない。もし熱心に議論する人がいたとしたら、金融メディアにしばしば現れる極端な単純思考の持ち主に違いない。しかし、今後「1兆ドルコイン」について取り上げる記事は増えていくことだろう。そのため、あらかじめ理解しておくことは重要である。

出所:ロイター通信

“Xデー“は6月5日?

このようなイカサマ合戦はいつまで続くのだろうか?正確なことは誰にもわからないが、“Xデー“と呼ばれる予測が参考になるかもしれない。

“Xデー“は、財務省が全ての現金を使い果たし、請求書の支払いや財務省証券保有者への返済ができなくなる日のことだ。現在、その日は2023年6月5日頃と推定されている。

注目すべきは4月中旬の税制改正のタイミングだ。この時に財務省がどれだけプラスのキャッシュフローを生み出すかが、Xデーがいつになるかを決めると言っても過言ではない。

この日が近づくにつれ、民主党は

・債務不履行
・社会保障費による損失
・幼稚園などへの給付金による損失

などを主張し、自己正当化を図ってくるだろう。

一方、共和党は、赤字の拡大、金利の上昇、米ドルの信用失墜、大量のドル紙幣の発行などに責任を転嫁するだろう。

4月頃にはXデーの見通しが立ち、一種の「デフォルトへのカウントダウン」が始まることになる。その間、金利の上昇とともに、株式のボラティリティが高まることが予想される。もし、株式を保有しているのであれば、あらかじめ覚悟が必要だ。

“アメリカは破綻している"

米国の債務残高対GDP比は、第二次世界大戦直後を除いて、歴史上最も高い水準(約125%)にある。

1945年に米国は戦争に勝利。以来、米国経済は世界の生産を支配してきた。戦時中は負債が加速したが、終戦後、負債はどんどんと縮小していった。

しかし、現在、その世界的な支配力は弱まり、負債を抱えるまでになっている。アメリカの歴史に残る大戦争は起きていないがそれでも借金は増え続けている。

経済成長を大幅に上回るペースで借金が膨らんでいるのだ。誤解を恐れずに言えば、米国は破滅に向かっている。これは大胆な予測ではない。数字に基づいた率直な評価だ。

出所:独立行政法人日本貿易振興機構

現在、米国はおよそ31.5兆ドルの借金を抱えている。もし、50兆ドルの経済規模があれば、31.6兆ドルの負債も問題ないだろう。しかし、2022年時点での米国GDPは26兆ドル。負債の方が大きいのだ。

債務残高のGDP比が高すぎることは何を意味するのか?その国はいつ、事態を好転させるのか?

危険地帯の3.5歩先をいくアメリカ

出所:The Financial Times

経済学者のケン・ロゴフとカルメン・ラインハートは、800年前にさかのぼり、財政破綻や債務不履行に陥った個々の国やを対象とした長い歴史調査を行った。

そして、債務残高の対GDP比が90%以上が危険水域であるとした。90%に達すると、事態は急激に悪化するというのだ。

その時点で、1ドルの負債が生み出す生産量は1ドル以下に。負債が成長の足枷になる。そして、現在の米国の債務残高対GDP比は約125%である。つまり、米国は危険区域の奥深くまでに位置している。

貨幣の速度(貨幣の交換速度)が低下しているため、金融政策では脱出できない。お金をたくさん刷っても大した意味がないだろう。

何十年もの間、人々は崩壊の危機を警告してきたが、それはまだ起こっていない。

多くの人々は、永遠を夢みているが、借金が増えるにつれ終焉の日は近づくことになる。

P.S.
著者のジム・リカーズについては、こちらで詳しくお伝えしている。
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