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【ゴールド特集⑤】日本で“金投資”が普及しにくい理由:「円」が強すぎたから

こちらのグラフをご覧ください。

赤い線と青い線が見えますよね。これらは、いずれも”とある投資先”の価格推移を表しているのですが、あなたは赤と青どちらに投資をしたいと思いますか?

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このグラフだけを見ると、おそらく多くの方が「赤」の方に投資をしたいと思われたのではないでしょうか?

ですが実はこれ、どちらも同じ「金価格」を表しています。

違いは、「円建て」か「ドル建て」かということだけ。青いグラフが円建ての金価格を表しているのに対し、赤いグラフはドル建ての金価格を表しています。

ご覧の通り、1973年以降、円建ての金価格は約10倍に上昇しました。一方で、ドル建ての金価格はその3倍…約30倍に上昇しているのです。

出所:田中貴金属のデータをもとにAPJ Media作成

投資対象は同じ「金」。にも関わらず、ドル建てか円建てかでそのリターンが3倍も違っているということです。

一体、なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?

それは、ドルがどんどん「弱く」なっている一方、円は着実に「強く」なってきたからです。実際1973年以降、円に対するドルの価値は約50%下落しています。逆に言うと、ドルに対する円の価値は約50%上昇したということ。

出所:Trading View

最近こそ円安が話題になり、「円が弱くなっている」と言われますが、長期的に見れば、弱くなっているのはむしろドル。円は「強く」なってきたのです。

さらに、「金の上昇はドルの不信任投票」と言われるように、ドルの価値が下がれば、相対的に金の価値は上がり、ドル建ての金価格は上昇します。

ですが、ドルに対して価値が上がっている「円」ベースでの金価格はそこまで上昇していないのです。だからこそ、このような違いが生まれているわけですね。

出所:田中貴金属のデータをもとにAPJ Media作成

そして、日本で金への投資があまり認知されていないことも、ここに理由の一端があるのかもしれません。

つまり、円が強かった故に、円建ての”金価格”がそこまで上昇しておらず、「魅力的な投資対象」としては映りにくかったのでしょう。

実際、円で給料をもらい、円で生活をする私たち日本人にとって、判断基準となるのは「円ベースで値上がりするか、しないか」ということですよね。

一方で、ドルの弱体化とそれによる金価格の上昇を肌で感じていた米国では、「金が有望な投資先だ」という認識が一般の投資家にも広く浸透しているようです。

事実、国際的な調査機関 ワールド・ゴールド・カウンシルが米国人投資家を対象に行った調査によると、「金への投資を考えていない」米国人投資家は全体のわずか20%程度。

残り約80%の人はすでに投資している、もしくは検討していると回答しています。

また、別の調査では米国人投資家の60%はドルよりも「金」を信頼していることが分かりました。

日本では、このような金に対する認識・信頼を持っている投資家はそう多くはないでしょう。

ですが今、弱くなっているのは「ドル」に限った話ではありません。日本円を含む、ほぼ全ての通貨が金に対して下落しているのです。

実際、2022年には、ほぼ全ての通貨で金価格は上昇。つまり金に対して、ほぼ全ての通貨の価値が下落したということです。

各国通貨建ての金のリターン
出所:Visual Capitalist

日本円も同じです。2023年8月末には円安の影響で、史上初めて円建ての金価格が1グラム=1万円を突破。ニュースでも度々取り上げられ、話題になっていますよね。

しかし、これは金に対する円の価値が「過去最低」に落ち込んでいることを意味します。

これまでは円が強かった故に、日本ではあまり金への投資が認知されてきませんでした。ですが、通貨の価値が下落している今、金に投資する意味はどんどんと大きくなっています。

一部の人はそのことに気付き、米国株や米ドル預金など、円以外の通貨に分散投資をしているかもしれませんが、ここまでお伝えしてきた通り、弱くなっているのはドルも同じです。

だからこそ、資産のリスクを軽減するための“通貨分散”として、「金」を保有する意味が大きくなっているのです。

実際、金に資産を分散することの効果は実証されています。ピクテ・ジャパンが行った調査によると、ポートフォリオに金を10%組み入れることで、リスクは抑えられ、リターンが大きくなることが分かっています。

こちらのグラフをご覧ください。これは、米ドル預金や日本株、世界株式といった各資産クラスに10%の金を組み入れた場合に、リターンとリスクがどうなるかを表したグラフです。上に行けばいくほど、リターンが大きくなり、左に行くほどリスクが小さくなっていることを意味します。

出所:ピクテ・ジャパン

ご覧の通り、金を組み入れることで、資産のリスクが軽減し、リターンが大きくなる傾向にあることが見て取れますよね。

金に”通貨分散”することで、資産全体の安定感が増し、より安心感を持って、資産を築いていくことができるかもしれません。ぜひ通貨としての「金」にも目を向けてみてください。

P.S.

次の記事はこちらからご覧いただけます。

→ゴールド特集第6弾を見る

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