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ウクライナは負けている。戦争の"真の勝者"とは…

From:ジム・リカーズ

CIA、ホワイトハウス、国防総省が頼る情報源:ジム・リカーズ

ジム・リカーズは、ウォール街で40年の経験を持つ金融・経済の専門家。地政学に精通している彼は、地理的な条件から、軍事や外交、経済を分析することを得意とする。実際、米国における彼への信頼は非常に厚く、CNBC、ブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナルといった世界的なメディアに数多く出演し、政治問題や経済の動向について提言を求められてきた。さらに彼は、ホワイトハウス、CIA、国防総省の元顧問である。2008年にはリーマンショックの発生を予測し、CIAに対して助言を行っていた。彼のもう一つの肩書きは、5冊のベストセラー本の著者。その著書には『The New Case for Gold』(邦題:いますぐ金を買いなさい)や『The Death of Money』(邦題:ドル消滅)がある。政府機関が信頼を置いてきた彼の予測や提言は、きっとあなたの金融知識の向上、ひいては資産形成にお役立ていただけるだろう。

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ウクライナで本当は何が起こっているのか、あなたは知っているだろうか?

ウクライナ戦争は今、世界で最も重要な話題である。しかし、ウクライナに関する米国政府やメディアの絶え間ない世論誘導を信じてはいけない。

ウクライナは戦争に勝っているのではなく、負けているのだ。

ここ数ヶ月、ロシアが後退し、ひどく負けているといったニュースを見た覚えはないだろうか?

ウクライナを持ち上げるのが今の報道の主流である。

だが、現実はこうだ。

ウクライナの勝利のほとんどは、ロシア軍が守るに値しないという理由ですぐに放棄した軽防備の陣地に対するものだった。

ロシア軍(実際はドンバス民兵)は、要塞化されたロシアの戦線に退却するよう命じられ、その間を埋めるために殺到したウクライナ軍は、ロシアの砲撃によって虐殺されたのである。

多くの人は戦争を領土という観点から考える。領土を失えば、戦争に負けるに違いない、と。しかし、そんな単純な話ではない。

知られざるロシアの戦略

ロシアは進んで領土を譲り、後日より有利な状況で再戦する。自分たちに有利な条件が整えば奪還するだけだ。

彼らは領土そのものを第一に考えているわけではない。ロシアの第一の目的は、ウクライナ軍を粉砕し、破壊することである。

ウクライナ人が土地を奪還し、ロシア軍の陣地に攻め込み続けるなら、ロシア側はそれでよいのだ。ロシア軍は重砲で攻撃部隊を粉砕するだけである(戦争では、銃弾や爆弾よりも大砲の方がはるかに多くの人を殺す)。

ウクライナ政府の主張とは裏腹に、とある情報筋では、ロシアは現在8~10対1の死傷率を享受していると言う。つまり、ロシアが一人の犠牲者を出す中、ウクライナは8~10人の犠牲者を出しているということだ。

このような比率はウクライナにとってそう長く耐えられるものではない。

休養する30万人の兵士と5,000台の戦闘車

一方、ロシアは30万人以上の兵員を休養させ、補給を受けながら陣地を強化している。これは、すでにウクライナに駐留している部隊の数に加えてである。

出典:Forbes

しかも、彼らは少なくとも1500台の戦車、5000台の装甲戦闘車、1000台のロケット砲システム、数百機の固定翼機とヘリコプター、数千機の戦術弾道ミサイル、巡航ミサイル、ドローンで援護されている。

同時に、ロシアは戦略を変えつつあることも分かる。ロシアの最初の侵攻は、無計画で、断片的な方法で行われた。メディアの報道とは違い、プーチンはキエフを征服し、ウクライナを占領するつもりはなかっただろう。侵攻軍は、その目的を達成するにはあまりにも小さすぎた。

また、プーチンはウクライナの民間人をターゲットにはしていなかった。彼は民間人の犠牲を可能な限り避けたかったのだ。もちろん、民間人の標的もあったが、それは戦争で起こることである。

プーチンはその代わり、『特別軍事作戦』がキエフとワシントンに、「ロシアがウクライナとの戦争を辞さないこと、武力行使も視野に入れていること」を伝えられると信じていたのだ。

プーチンは、武力の誇示によって交渉のテーブルに着かせることができると考えたが、これは大きな誤算であった。キエフとワシントンは交渉のテーブルにつくどころか、ウクライナを積極的に防衛することを決意したのである。

ロシアの準備不足の軍隊は押し戻され、多くの場合、敗退した。

“ロシアは今度こそ本気だ”

しかし今、ロシアは真の手腕を発揮している。すでに電力網やエネルギー供給網など、ウクライナのインフラに対する大規模かつ持続的な攻撃を開始しているのである。

軍隊も再編成され、大規模な反撃の準備を進めている。昨年2月の無計画な攻撃と同じ轍を踏むことはないだろう。ロシアは今度こそ本気だ。

ウクライナを交渉のテーブルにつかせることには、もう興味がない。ウクライナの軍事力を破壊し、キエフに和解を押し付けることに集中しているのだ。

ウクライナ南部の地面が完全に凍結する頃、冬の大規模な攻勢がまもなく始まるだろう(ぬかるんだ地面ではロシア軍は動けなくなる)。

反攻が成功すれば、ドンバス(ウクライナの産業と天然資源の中心地)の支配が強化され、ザポリツィヤ(ヨーロッパ最大の原子力発電所)の支配権がロシアに与えられ、おそらくウクライナの最重要港であるオデッサの征服も含まれることになるだろう。

キエフからリヴィウまでのウクライナの他の地域は、発電能力、輸送ライン、食糧供給がほぼ完全に低下するなど、恐ろしいほどの犠牲を払うことになる。

米国や英国からの武器供給は、少なすぎるし遅すぎる。それにウクライナ人はそれを使うための訓練をほとんど受けていないので、あまり意味をなさないだろう。

しかし、こうした見通しは、民主党と共和党の反ロシア戦争屋にはまったく関係ない。彼らは、たとえそれが最後のウクライナ人になるまでロシアと戦うことを意味するとしても、何としても戦争を長引かせようと決意しているのである。

ウクライナ戦争の"真の勝者"

毎週のように、米国はウクライナに対して数十億ドル規模の新たな支援策を発表しているように思われる。これらの援助は2つのカテゴリーに分けられる。

一つは、政府を維持するための資金を供給し続けるための単純な資金移動である。

もう一つは、無人偵察機、パトリオットのような対ミサイル砲台、長距離砲、そして最近ではブラッドレー戦闘車(BFV)をウクライナに供給するかもしれないという発表など、「兵器」からなるものである。

2週間前にアメリカ議会で可決された1兆7000億ドルの予算を含め、こうしたウクライナ支援の総額は現在1000億ドルに迫っている。

出典:Bloomberg

武器に関して言えば、ウクライナへの支援は見た目よりずっと少ない。ウクライナは何十億ドルもの装備を手に入れているように見えるが、実はウクライナは米国の在庫から”廃棄”されたものを手に入れているだけなのだ。

実際には、米国は古い、あるいは時代遅れのシステムをウクライナに投棄し(オリジナルのBFVは1981年に製造され、40年以上も前だ)、その予算を使って自分たちのために新しい武器を注文しているのである。

一方、米国はウクライナに旧式のパトリオット防空システム、それもミサイルランチャー8基からなる1個だけのバッテリーを送ることになりそうだ。これは、多くの人が考えているような画期的なものではない。

ロシアは単純に数で圧倒し、システムを破壊するだろう。配備されたとしても長くはもたないだろうし、それは今から数カ月後のことかもしれない。

これらの兵器移転の真の勝者は、ロッキード・マーチン、レイセオン、ノースロップ・グラマンといった米国の防衛関連企業である。

出典:Lockheed Martin HP

彼らは、米国のために新しい高度なシステムを構築するための資金を得ることになる。

本当の敗者はウクライナの人々である。彼らは、交渉による解決策がない限り、不必要に死に続けることになるのだ。

危機に瀕している米国の信用

この騒動をさらに不条理にしているのは、ウクライナに渡った装備の多くがロシアによってすぐに爆破されることだ。

ロシアは、ウクライナに到着した兵器システムの所在について、非常に優れた情報を持っている。衛星画像、レーザー誘導

、ドローンと巡航ミサイルの組み合わせで、プーチンはこれらの兵器が戦場に到達するのを阻止するか、到達しても破壊することに成功している。

出典:MAXAR

しかし、米国はすでにウクライナに多額の資金を投入し、ロシアの完全な敗北を強く望んでいる。

ロシアの勝利は、アフガニスタンでの大失敗に頭を抱える米国にとって、新たな歴史的敗北となる。米国はアフガニスタンでの失敗を引きずったままであり、米国の信用は危機に瀕しているのだ。

出典:CNN

アメリカよ、目を覚ませ

ロシアがウクライナを敗北寸前まで追い込んだらどうなるのか?

バイデンをはじめとする反ロシア色の強い政権は、ただ手を挙げてロシアに勝利を譲るのだろうか。

彼らの耳障りのよい発言とウクライナの勝利へのコミットメントからすると、その可能性は低いように思われる。

バイデンは一向に譲る気配がなく、最近も「ウクライナに必要なだけの武器を供給する」と発言している。

出典: Reuters

一方、プーチンも一歩も引かず、重要なオデッサ港を含むウクライナの全海岸を確保しようと決意しているようだ。

米国が愚かにも、ウクライナの敗北を食い止めるために、最後まで強力な支援を続けた場合、大きな危険が生じる可能性がある。そうなるとは予言しないが、自暴自棄になって戦術核兵器を使用するところまで事態がエスカレートする可能性がある。

そこから戦略核の使用へと一歩踏み出すことになる。

繰り返しになるが、私はそうなることを予言しているわけではない。しかし、現実的な可能性であり、私たちが目を覚まさない限り、核対決へ進んでいく恐れがある。

この話題については、引き続き動向をお届けしていく。

P.S.

著者のジム・リカーズについては、こちらで詳しくお伝えしている。

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