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中国は"2つ"ある。拡大する格差社会

From:ジム・リカーズ

ホワイトハウス、CIA、国防総省が頼る情報源:ジム・リカーズ

ジム・リカーズは、ウォール街で40年の経験を持つ金融・経済の専門家。地政学に精通している彼は、地理的な条件から、軍事や外交、経済を分析することを得意とする。実際、米国における彼への信頼は非常に厚く、CNBC、ブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナルといった世界的なメディアに数多く出演し、政治問題や経済の動向について提言を求められてきた。さらに彼は、ホワイトハウス、CIA、国防総省の元顧問でもある。2008年にはリーマンショックの発生を予測し、CIAに対して助言を行っていた。彼のもう一つの肩書きは、5冊のベストセラー本の著者。その著書には『The New Case for Gold』(邦題:いますぐ金を買いなさい)や『The Death of Money』(邦題:ドル消滅)がある。政府機関が信頼を置いてきた彼の予測や提言は、きっとあなたの金融知識の向上、ひいては資産形成にお役立ていただけるだろう。

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「中所得国の罠」にはまった中国

中国は、「中所得国の罠」にハマっている。

これは、発展途上国が一定規模(中所得)にまで経済発展した後、成長が鈍化する傾向のことを言う。

そもそも経済学者は、所得レベルについてこのように分類している。

  • 低所得国とは一人当たりの年収が5,000ドル程度(約65万円)の国

  • 中所得国は8,000ドル(約104万円)から15,000ドル(約195万円)の間の国

  • 高所得国は2万ドル前後、それ以上の国を指す。

中国の場合は12,970ドルで、中所得に分類される。ちなみに米国は、75,180ドル(約977万円)で、世界最高水準(スイスに次いで2位)。日本は41,513ドル程(約539万円)である。

(※1ドル=130円で計算)

こうやって比較してみると、中国の所得レベルは低いと思われたかもしれない。しかし、中国の所得格差は非常に大きいため、「平均」で捉えていてはその本質が見えてこない。

中国には2つの階層があると考えたほうが良いだろう。

中国は"2つ"ある。拡大する格差社会

1つは約5億人の都市労働者で、1人当たりの年間所得は約2万8000ドル。もう1つは約9億人の村民で、1人当たりの年間所得は約5000ドルである。

つまり、9億人の村民は「低所得者」の部類に入り、中所得者には遠く及ばない。

さらに5億人の都市労働者の中でも所得格差は拡大している。実際、そのほとんどが年間1万2000ドル程度の中所得者であるのに対し、一部の人々は年間数百万ドルの所得を得ている。

要するに中国には、その大半を占める低所得者層と、多くの中所得者層、ごく一部の超富裕層が存在するのだ。

この所得格差が、中国が「中所得層」から脱却することをより困難なものにしている。

また、超富裕層は、低所得者層の社会不安の原因となる可能性がある。

中国の付加価値はわずか6%程度

従来の常識では、低所得層から中所得層への移行は非常に簡単であると考えられてきた。

まず、何千万人(中国の場合は何億人)もの人々を農村から都市に移住させる。きちんとした住宅と公共交通機関を提供し、外国から投資マネーを集め、製造工場を建設する。

都市に住む人々は、多少の訓練を受ければ、製造の仕事を難なくこなす。低い人件費で商品を安く組み立て、魅力的な価格で輸出することができるのだ。

さらに移民が増え、外国からの投資が増え、生産能力が拡大するというサイクルが繰り返される。

これによって、一人当たりの所得は低所得者層から中所得者層へと移行する。

しかし、高所得の大台に乗るには、高付加価値の技術革新と製造に適用される高い技術が必要である。

中国にはこれがない。

中国擁護派は、iPhoneの9割が中国産であることに感銘を受けているようだ。確かにその通りだが、中国の付加価値は6%程度に過ぎない。

例えば、iPhoneが1,000ドルするとしよう。輸入コストとロイヤリティ(特許権・商標権の使用料)を差し引いても、中国に入るのはわずか60ドル程度ということである。

実際、OPEC加盟国を除いて、中所得国から高所得国への飛躍を遂げた国はほとんどない。アジアでは、日本、韓国、香港、台湾、シンガポールがその例である。

マレーシア、インド、トルコ、タイ、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ロシア、チリなどといった多くの国は、中国とともに「中所得国の罠」にはまり込んでいるのだ。

低所得国から中所得国への成長は"奇跡"ではない

低所得から中所得への移行は"驚くべきこと"ではなく、"期待されるべきこと"である。

"奇跡 "ではないのだ。

汚職を取り締まり、十分なインフラを整備し、何百万人もの人々を田舎から都会へ移動させたときに起こることである。

中国はそれを成し遂げたのだ。

したがって、今後の中国の成長を予測する上で重要な変数は、「技術」である。単に外国の技術を(高いコストをかけて)ライセンス(使用)するのではなく、先進国の競合他社に先駆けて自国の技術を開発することができるのか?

この点で、中国の見通しは芳しくない。

中国は自前のイノベーションをほとんど行っていない

半導体、大容量航空機、医療診断、原子炉、3Dプリンター、AI、浄水、バーチャルリアリティなどの分野で、発明や生産の能力をほとんど、あるいは全く発揮していないのだ。

中国が展示している先進的なプロジェクト(時速310キロで静かに走る新幹線など)は、ドイツやフランスからライセンスを受けた技術で行われているか、盗んだ技術で行われている。

中国は自前のイノベーションをほとんど行っていない。

そして、中国への先端半導体輸出の禁止や、ファーウェイの5Gシステム使用への制裁などで、技術の盗用ルートは閉ざされつつある。

出典:日本経済新聞

その上、中国は過剰債務、人口動態の悪化、不動産市場の崩壊、石油・天然ガスの埋蔵量不足という強力な経済的逆風に直面しているのだ。

出典:日本経済新聞

共産主義への回帰

中国はまた、少数民族ウイグルに対する虐殺、政治犯からの強制的な臓器摘出、強制収容所、女性の嬰児殺(2000万人以上の女児が殺された)、宗教弾圧、検閲、社会信用度、軟禁、アリババグループのジャック・マーなどの企業家からの収奪など、地政学的にも強い逆風にさらされている。

とりわけ、新皇帝・習近平の指導の下、毛沢東思想を掲げ、共産主義に回帰したことが障害になっている。

出典:ウォール・ストリート・ジャーナル

江沢民の指導の下、1992年から2007年まで続いた開放的な経済政策をほぼ放棄。共産党とその「中核となる人間」をすべての意思決定と経済の中心に置いたのである。

中国経済の逆風は、債務と人口動態という大きく2つに分けられる。

中国が直面する2つの課題

国家債務残高(借金)の対GDP比(生産性)が90%を超えると成長が鈍化することは、経験則上明らかである。

中国の場合、正確に判断するのは難しいが、債務残高対GDP比は350%程度だろう。

さらに、債務の多くが生産的に使われていないことが、この問題を悪化させている。

私は、中国の田舎で、地平線まで見渡せるような都市を一から建設している現場を見たことがある。空港、高速道路、ゴルフ場、会議場、その他の施設も一緒に建設されていた。

しかし今、そこには何もない。

ビルには、少しのテナントしか入っていないし、将来の予約も空っぽである。建設は、数年間の雇用を出みだし、資材も購入したが、借金で作ったインフラは完全に無駄になってしまったのだ。

中国が突き当たっている「債務の罠」から抜け出すには、デフォルト(債務不履行)、債務再編(※)、インフレのどれかしかない。

(※債務の返済ができなくなり、返済期間の延長や元本の削減といった債務の再編を行うこと)

このような状況はすぐに解決されるとは限らない。債務負担は何年も続く可能性がある。ただ、それが続いている間は、力強い成長は期待できないだろう。

世界史上最大の経済崩壊

また、中国の出生率は現在、「置換率」と呼ばれるものを下回っている。これは一組の夫婦につき、2.1人の子供が生まれるというものである。

現在の中国の出生率は約1.6と言われているが、実際の出生率は1.0かそれ以下という分析もある。このままでは、今後70年間に中国の人口は14億人から約8億人に減少する。

6億人がいなくなる計算だ。

生産性が一定で(中国がハイテク移行に失敗した場合は妥当な仮定)、人口が4割減るとすれば、経済も4割以上縮小することになる。

それは世界史上最大の経済崩壊である。

パンデミック、人口動態、負債、テクノロジー、世界同時不況の全てが中国の成長にマイナスの影響を与えるはずである。

この成長ストーリーは、台湾への侵攻や南シナ海での戦争の可能性という点で、地政学に必然的に滲み出てくる。

これは、今日世界で繰り広げられている最大の経済・地政学的ドラマであり、すべての投資家にとって重要な意味を持っていることは間違いない。

P.S.

著者のジム・リカーズについては、こちらで詳しくお伝えしている。


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