「分散投資」を勘違いする投資家たち
From:ジム・リカーズ
「分散投資」を勘違いしている投資家たち
あなたは「分散投資」ができているだろうか?
「資産形成は分散投資が重要」
「いろいろな業界に資産を分散しよう」
「卵を一つのカゴに盛ってはいけない」
これらは投資に関する書籍やメディアでよく言われることである。
確かに分散投資は投資家として非常に重要なことだ。
しかし私は「分散投資」という言葉を勘違いしている人をよく見かける。
投資可能な資金の9割を株式(特にインデックスファンドやETF)で運用し、分散投資をしていると主張する投資家によく出くわすのである。
彼らは、「インデックスファンドやETFは、テクノロジー、鉱業、小売、消費財など、10以上の主要セクターの50~500銘柄で構成されている」と主張する。つまり、しっかり分散されているのだ!と。
だが私からすれば、それは分散投資ではない。
10の業界の50銘柄や500銘柄を保有していたとしても、それは「株式」という一つの資産クラスである。
たしかに多くの場合、異なる業界の株式は互いに調和し合い、平均的なパフォーマンスを示す。その場合には、分散投資は必要ないかもしれない。
だが、本当に「分散投資」が必要なときというのは、特有な株式は一夜にして消え、すべての株式(セクターを問わず)が沈むことになるのだ。
私はこの戦略を「偽の分散投資」と呼んでいる。
真の分散投資
真の分散投資とは、株式、債券、不動産、プライベート・エクイティ、現金、天然資源、そして金など資産クラスを横断するものである。
世界がどのような状況だったとしても、これらの資産クラスの一部はパフォーマンスが低下するが、他の資産クラスは上昇する。
現金は、ポートフォリオ(金融商品の組み合せ)全体のボラティリティ(価格の変動)を下げ、ポートフォリオの比重を変えたり、暴落の中から”掘り出し物”を探したりする際のオプションとなる。
不思議なことに、デフレ下(物価が下がる現象)では、現金は最もパフォーマンスの高い資産となり得るのだ。それを忘れてはいけない。
多様な資産クラスを組み込むと、ウェイトの問題が生じる。
では、それぞれの資産クラスを何パーセントずつ配分するのか?
私は、金に関しては10%の配分を推奨してきた。これは多くの人に驚かれる。
私は「金の支持者」としてよく知られており、目標価格を1オンスあたり5,000ドルとし、そこから一気に1万5,000ドルまで上昇することを期待している。
ちなみに、直近の価格は1,800ドル付近である。これはここ10年で最高の水準だ。
故に人々は、「そんなに金に強気なら、なぜ100%、あるいは少なくとも50%を割り当てないのか ?」と言ってくる。
この質問(と暗黙の批判)にはいくつかの答えがある。
第一に、私が間違っている可能性がある。金は1オンスあたり500ドルまで下がる可能性もあるのだ。もちろんそれを期待してはいないが、その可能性を排除するのは愚かなことである。
ローリスク・ハイリターン
10%の資産配分であれば、金が500ドルになったとしても、あなたのポートフォリオはまだ生きている。投資する際には、ちょっとした謙虚さが大切なのである。
第二の理由は、金の値動きが非対称であることだ。価格は上がることも下がることもある。が、上昇の可能性は下降のリスクよりはるかに大きい。
そして、10%の配分はハイリターンのシナリオでは非常に役に立ち、ローリターンのシナリオではそれほど大きな痛手にはならないのだ。
例えば、金に対して資産の10%を投資したとする。
そして金の価格が1オンスあたり1,665ドルから5,000ドルに200%上昇したとしよう。
10%の配分で200%の上昇となれば、ポートフォリオに20%のプラスとなる。
逆に、金が20%下落して1オンスあたり1,330ドルになったとしても、ポートフォリオの損失はわずか2%にとどまるのだ。
もし下落よりも上昇の可能性が大きいのであれば、10%の配分で大きな利益を得ることができ、大きな損失からあなたを守ることもできるのである。
第三の理由は、何事も単独では起こらないということだ。金が1オンスあたり1,000ドルまで下がる可能性はあるか?
答えはイエスである。
ただ、1,000ドルの金の世界では他に何が起こっているかを考えてみてほしい。
それは、デフレと経済崩壊の可能性が高い世界である。つまり、株価は現在の水準から60%以上下落する可能性があるということだ。(ダウ平均が11,800ドル程度まで下がるということである)
ゴールドは価値の貯蔵庫
その世界では、ダウ11,800ドルで取引されている株式ポートフォリオよりも、1,000ドルの金の方がいい。
すべてが下落を続ける中でも、金は上昇していくだろう。それが金の「価値の貯蔵庫」としての役割の一部なのだ。
最後に、どのような資産であっても、一つの資産クラスに過度な集中をすることは決して良いことではない。
2000年のドットコム株や2007年のサブプライム住宅ローンに投資していた人なら、私の言っていることがよくわかるだろう。
また、10%の配分で金のパフォーマンスが良くても、他の資産のパフォーマンスが悪いとは限らない。金価格が急上昇している世界は、おそらく不動産、美術品、コモディティも好調な世界なのである。
金相場が上昇しているときに10%を金に配分することは、高いリスクを負うものではない。他の資産クラスでもかなりうまくいく可能性がある。それが分散投資の力だ。
もし今、金に10%投資しているのであれば、じっと我慢してほしい。
そうでない場合は、今が割り当てを増やす絶好の機会だ。価格が下がれば、その分いいことがある。まだ十分に投資していない人にとっては、絶好の買いチャンスとなるのだ。
P.S.
著者のジム・リカーズについては、こちらで詳しくお伝えしている。
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