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いつ来るか?”現金がなくなる日”

From:ジム・リカーズ

ジム・リカーズは、ウォール街で40年の経験を持つ金融・経済の専門家。地政学に精通している彼は、地理的な条件から、軍事や外交、経済を分析することを得意とする。実際、米国における彼への信頼は非常に厚く、CNBC、ブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナルといった世界的なメディアに数多く出演し、政治問題や経済の動向について提言を求められてきた。さらに彼は、ホワイトハウス、CIA、国防総省の元顧問である。2008年にはリーマンショックの発生を予測し、CIAに対して助言を行っていた。彼のもう一つの肩書きは、5冊のベストセラー本の著者。その著書には『The New Case for Gold』(邦題:いますぐ金を買いなさい)や『The Death of Money』(邦題:ドル消滅)がある。政府機関が信頼を置いてきた彼の予測や提言は、きっとあなたの金融知識の向上、ひいては資産形成にお役立ていただけるだろう。

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私が現金に対する戦いやキャッシュレス社会の脅威について話すと、大げさだと感じる人や、真剣に受け止めてくれない人がいる。

私は決して大げさに言っているわけではない。その脅威は存在し、拡大しつつあり、悪化の一途をたどっている。オーストラリアを見ればわかるだろう。米国との類似点が多い、欧米型の民主主義国家だ。

現金に対する戦いの行方は、米国人へ警告を与えてくれている。

今年3月、オーストラリアの4大銀行のうちの一行が、複数の店舗において現金の入出金を制限すると発表した。

Daily Mail Australia: 紙幣の廃止が迫るなか、オーストラリアの大手銀行は店舗での現金引き出しを終了へ

過去1年間で、同国では10億ドル分の紙幣が流通から消えた。

また、オーストラリア準備銀行が3月に公表した報告書によると、現金で決済される小売決済の割合は、2007年の70%から2019年には27%まで減少している 。

現在はさらに減少している。新型コロナウイルス感染症の蔓延により、2020年に現金からの脱却が加速したからだ。現金はウイルスを媒介する可能性があるから使用を避けるように、と言われていたのを覚えているだろうか?

2022年には、オーストラリアの小売店における現金決済の割合は、わずか13%にまで落ち込んでいる。 現金決済が完全に消える日はいつだろうか。

現金を廃止してはいけない!

キャッシュレス推進派は利便性を大きなメリットとして挙げる。カードのスワイプやスマートフォンで支払いができるのに、なぜわざわざ現金や硬貨を持ち歩く必要があるのだろうか?

さらに、現金は闇取引の犯罪行為を助長すると言われている。現金は犯罪資金になるからだ。

オーストラリア政府が2018年に発表した報告書によると、国内の発行済み紙幣の8%が闇取引で使用されていたという。

さらに、現金の製造、輸送にはコストもかかる。オーストラリアの一流大学の教授が次のように書いている。

”あまり意識されていないが、現金の移動、仕分け、補充には膨大なコストがかかる。

硬貨を製造すると赤字になる。5ドル紙幣であろうと100ドル紙幣であろうと、紙幣1枚の製造コストは約32セントだ。つまり、紙幣の印刷では利益が出る。

実際には、紙幣と硬貨の輸送、保管、銀行やレジへの補充でコストが生じる。オーストラリア準備銀行が銀行に支払う損傷紙幣の返却代金は別として、銀行(そして銀行を通じた小売店)がそのロットのコストを支払うことになっている。”

つまり、現金は不便で犯罪を助長し、製造や輸送にコストがかかりすぎるというのだ。それには確かに一理ある。少なくとも一部は正しいと言えるだろう。

最大の嘘には真実が隠されている

確かに、カードをスワイプしたり、スマートフォンをスキャンしたりするのは、銀行やATMで現金を引き出し、財布に入れて持ち歩いたり、小銭をやり取りするよりも簡単だ。

現金をなくして中央銀行デジタル通貨(CBDC)に置き換えれば、闇取引に影響が出るだろう(彼らは抜け道を考えるだろうが)。

一方、現金はデジタル通貨よりもコストがかかる。デジタル通貨なら移動用の輸送トラックの手配は不要だ。銀行強盗も絶滅する!そして、トラックの運転手や警備員は、コーディングを学習することになる!

もうお分かりだろう。これが現金に対する戦いが成功している理由だ。デジタル通貨は現金よりもはるかに利便性が高いのである。

しかし、誰も教えてくれないことがある。デジタル通貨によって、私が「お金の牢獄」と呼ぶ、逃れることのできない場所に追いやられることになる。

人々を満足させる最も確実な方法は、すぐに習慣化でき、絶対に手放せない「便利さ」を提供することだ。

自ら進んで罠にはまる人々

もちろん、これはオーストラリアに限ったことではない。ある調査によると、米国人とヨーロッパ人の3分の1以上が、現金を手放して完全にデジタル化することにまったく問題がないと回答している。具体的には、ヨーロッパ人の34%、米国人の38%がキャッシュレス化を希望している。

彼らはお金の牢獄に入れられることに何の問題も感じていない。問題を感じるべきなのに。

実際、政府は常にマネーロンダリング(資金洗浄) 、麻薬取引、テロリズムを口実に、善良な市民を監視し、現物の現金や金、最近では暗号資産といった代替通貨を利用する能力を奪っているのである。

現金に対する戦いの本当の負担は、マイナス金利、プライバシーの喪失、口座の凍結、現金の引き出しや送金の制限によって財産の没収のリスクにさらされる善良な市民にのしかかっている。

いわゆる「キャッシュレス社会」は、すべての金融資産が電子化され、少数のメガバンクや資産運用会社の記録に電子的に表記するシステムのためのトロイの木馬にすぎない。


ひとたびそれが実現すれば、国家権力による財産の没収や凍結、常時監視や課税、マイナス金利のような他の形態のデジタル没収が容易に行われるだろう。

現金が防壁になる?

銀行に行って現金を引き出すことができる限り、国家権力による影響は受けない。それが重要な点だ。現金は中央銀行によるマイナス金利の導入を抑止してくれる。中央銀行がマイナス金利を導入すれば、人々は銀行システムから現金を引き出してしまうからだ。

マットレスの中に現金を隠しても、何も得られない。その通りだ。しかし、少なくとも損をすることはない。すべての現金がデジタル化されれば、現金を引き出してマイナス金利を回避することはできなくなる。出口のないお金の牢獄の中に閉じ込められることになるだろう。

つまり、一度その牢獄に押し込めば、政府はあなたのお金をはるかに管理しやすくなるということだ。それが彼らの真の目的であり、他の理由はすべて嘘にすぎない。

繰り返すが、彼らがそれについて教えることはない。

ビットコインのような暗号資産はどうだろうか?それを使ってお金の牢獄から脱出できるだろうか?

まず、政府は現金の製造を独占しており、ビットコインのようなデジタル通貨にその独占権を明け渡すつもりはないことを理解しておこう。それが、政府も自分たちがコントロールできるCBDCへの道を切り開くために暗号資産と戦っている理由だ。

暗号資産を支持する自由主義者たちは、その非中央集権的な性質と、政府の手が届かないことを称賛してきた。しかし、政府の支配が及ばない強力なシステムの存続に対する彼らの認識は甘かった。

ブロックチェーンは、有機化合物の一つであるイーサー(某暗号資産の名前ではあるが)にも、火星にも存在していない。ブロックチェーンは、サーバー、通信ネットワーク、銀行システム、電力網などの重要なインフラに依存しているのだ。これらはすべて政府の管理下にある

暗号資産支持者たちはその現実を理解する必要がある。

ゆっくりと、やがて突然に

良いニュースは、米国を含む多くの国で現金が依然として主要な支払い手段であるということだ。悪いニュースは、電子決済が普及し、現金の使用量が減少すれば、コストと物流の問題から現金を使い続ける意味がなくなり、「転換期」が突然やって来る

現金の使用量がある一定まで減少すると、規模の経済(企業が生産規模を拡大することで生じる経済効果)が失われ、一夜にして使用量がゼロになる可能性もあるだろう。音楽業界でMP3やストリーミング形式が普及した途端、CDが突然姿を消したことを思い出してほしい。

それだけ現金が消えるのは早いということだ。

ひとたび現金に対する戦いが勢いづけば、実際そう遠くない将来に、それを阻止することが事実上不可能になるだろう。

プライバシーの喪失に加え、キャッシュレス社会がもたらす他のリスクは、クレジットカードやデビットカード、その他の電子決済システムによって送金されるデジタル通貨が、電力網に完全に依存しているという事実に基づく。

嵐、事故、破壊工作、サイバー攻撃などで電力網が停止すれば、デジタル経済は完全に停止する。政府はそのことも教えてくれない。

今こそ自分の身を守る時だ。最良の方法は、資産の一部を銀行システム外で管理することだ。

流動資産の一部を(できる限り)紙幣、金、銀にしておくことをお勧めする。

くれぐれも、お金の牢獄におびき寄せられないように!

P.S. 著者のジム・リカーズについては、こちらで詳しくお伝えしています。

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