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【どちらが賢明なのか?】個人投資家は米ドル資産を、政府は金資産を作る

From:ジム・リカーズ

ジム・リカーズは、ウォール街で40年の経験を持つ金融・経済の専門家。地政学に精通している彼は、地理的な条件から、軍事や外交、経済を分析することを得意とする。実際、米国における彼への信頼は非常に厚く、CNBC、ブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナルといった世界的なメディアに数多く出演し、政治問題や経済の動向について提言を求められてきた。さらに彼は、ホワイトハウス、CIA、国防総省の元顧問である。2008年にはリーマンショックの発生を予測し、CIAに対して助言を行っていた。彼のもう一つの肩書きは、5冊のベストセラー本の著者。その著書には『The New Case for Gold』(邦題:いますぐ金を買いなさい)や『The Death of Money』(邦題:ドル消滅)がある。政府機関が信頼を置いてきた彼の予測や提言は、きっとあなたの金融知識の向上、ひいては資産形成にお役立ていただけるだろう。

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金は投資家にとって最も安全な資産である。世界情勢も危険極まりない。セオリー通りであれば、金価格は上昇しているはずだ。

しかし、現実はそうではない。

まずはファクトを見ていこう。3月に200ドル以上上昇した後、現在1オンス当たり約2,020ドル程度となっている。2020年8月6日につけた史上最高価格である2089ドル以下だ。金価格は揺れ動いている

現在の価格は3年前以下だ。1,680ドルまで下落したこともある。山あり谷ありであった。だが、さほど変わり映えしない中心値へと常に戻っていく傾向が強い。

インフレ、物資不足、そして戦争という状況は経済から見れば不況だが、金にとっては好況だ。にもかかわらず、なぜ1オンス3,000ドルを超えないのか?4,000ドル、5,000ドル、それ以上へと上昇していかないのだろうか?

増加する金保有量

需要と供給の関係から見ると、金価格の上昇を後押ししている。世界的に金の生産量は過去7年間ほぼ一定だ。世界中の産出量は横ばいである中、各国の中央銀行が金の公的保有量を6%以上増やしている。

中国は過去13年間に1,400トン以上金の保有量を増加させた。これは公式な数値で、非公式にはそれよりも遥か多くの量を保有しているだろう。また、ロシアも1,500トン以上の金を入手した。

その他、ポーランド、トルコ、イラン、カザフスタン、日本、ベトナム、メキシコなどが金を大量に購入した。チェコスロバキア、ハンガリー、ポーランド、スロバキアのヴィシェグラード諸国もまた、金保有を増やしている

出所:日本経済新聞

しかし、個人投資家が金融資産としての金に未だに無関心なのは興味深い。理論的に、中央銀行は世界の金融制度の実情に最も精通している。もしその中央銀行がドルやユーロでできるだけ多くの金を購入しているとしたら?

中央銀行の保有量は地上にある金のほんの17.5%にすぎない。宝飾品への需要の方が遥かに上回っている。それでも中央銀行が市場について最も知識のある市場参加者であることに議論の余地はないだろう。

金利もまた、補助的な役割を担っている。過去3年における金価格の動きの多くは、金利の動向と連動しているからだ。完全ではないが、強い相関を示しているが。

出所:OANDA証券

2020年後半の金価格の反発は、米10年国債の利回り低下によるものだ。(2019年12月19日時点の1.930%から2020年7月31日時点の0.508%へ下落した)

同様に、2021年2月以降の金価格の下落は、米10年国債の利回り上昇が原因である。(2021年1月2日時点の1.039%から2022年5月2日時点の3.130 %へ上昇した)

これから米10年国債の利回りは再び下落。世界経済の成長が弱まるにつれて、さらに下降することだろう。金投資家にとっては朗報だ。金価格の上昇をもたらす可能性が高い。しかし、金価格2,000ドル以上への押し上げは期待できそうにない。

何が問題なのか?

過去3年間で金にとっての本当の逆風であり、また勢いを増すのに苦戦している主な理由はドル高だ。

出所:Wall Street Journal 

金のドル価格は、ドルの強さと対称的だ。ドル安であれば、金の価格は上昇。ドル高であれば、金の価格は安くなる。

注目すべきは、過去3年金が急騰しなかったことではない。根強く続いているドル高に直面しながらも、金が価格を維持しているということだ。

ドル高の要因は、銀行の貸借対照表やヘッジファンドのレバレッジに活用される担保としてのドル建て需要である。

現在、質の高い担保は供給が不足している。銀行が不足しがちな担保を求めると、短期国債を支払うためのドルが必要に。その結果、、ドルの需要が高まる

担保の争奪戦はまた、米銀シリコンバレーバンク破綻に付随する金融危機経済成長の低下債務不履行の懸念借り手の弁済能力の低下世界的な流動性危機への懸念にもつながっていく。解決の目処は立っておらず、危機は目前だ。

低成長が世界不況へと発展すると、新たな金融恐慌の兆しが見えてくる。中国、ロシア、トルコ、インドといった主要経済国が米国のドル中心のシステムをできる限り避けたいと望んでいる。米国が積極的な制裁を行えば、その時点でドル自体が安全資産でなくなっているのかもしれない。この恐慌が起こり、ドルがもはや信用できない通貨とみなされる時、世界は金を頼りにするだろう。

金価格の横ばいの変動に意気消沈するのは理解できる。しかし、その背後に、新たな流動性危機が迫っている。

投資家は現在の金価格を天の恵みとして、真の安全逃避資産競争が始まる前にこの価格で金を購入できる最後のチャンスだと考えるべきだ。

2,000ドル以上であっても、金は今とても安く、実質的に格安であると言えよう。

P.S.

期間限定でジム・リカーズ氏に関する一本の動画を公開しました。この動画では、ジム・リカーズ氏がいかにして未来を予測しているのか?その秘密に迫っています。

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