すでに石油の供給は不足している。15年ぶり…1,000%成長が期待される巨大トレンド
From チャールズ・ミズラヒ
最近の金融メディアは、銀行破綻や金融危機に関するニュースで溢れ返っている。しかし、本当に注目すべき情報(シグナル)は他にある。それが、石油・ガス業界の展望だ。
投資家は銀行破綻が世界的な不況に繋がることを懸念している。そして、不況になれば、石油やガスの需要は低下。価格は下落する。
実際、原油価格は15カ月ぶりの安値をつけた。ゴールドマン・サックスは、目標株価を1バレル(約159リットル)あたり75ドルに引き下げている。
しかし私は、需要と供給が、これらの予測とは全く異なるものになると分析している。今後数年間で石油価格は急上昇し、一部の投資家に恩恵をもたらす可能性があるだろう。
すでに石油の供給は不足している
石油は、世界の経済成長にとって必要不可欠である。経済が成長するにつれ、より多くの石油が必要になる。実際、アメリカやヨーロッパでは、これまで以上に需要が増加している。インドのような近代化が急速に進んでいる国では、特にそうだ。
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界は今年末までに毎日1億400万バレルの石油を消費する。その一方で、生産は不足する見込みだ。下のグラフはIEAの予測に基づくものであり、青が不足を示している。
すでに石油の供給は不足しているのだ。その結果、物価は上昇し、ガソリンスタンドには長蛇の列ができる可能性がある。計画停電が起こることもあり得るだろう。
このような事態は、歴史を見れば誰でも予想がつくことだ。では、"ワシントンの天才たち"(政府)は、国を守るためにどんな準備をしたのだろうか?
需要の急増×供給の減少…これが何を意味するのか?
再生可能エネルギーは、バイデンの大統領選挙の要だった。就任以来、彼は化石燃料と戦う姿勢を示し、石油・ガス・石炭からの脱却に厳しい期限を設けている。今月には、130億ドルの石油・ガス補助金を廃止する法案を提出すると語った。
つまり、掘削業者や探鉱業者に対するインセンティブを無くすということである。これはバイデンの世論調査にとっては、ポジティブに働くかもしれない。しかし、長期的に見ればアメリカ人の財布を助けることはできないだろう。
これが政治的なものだと確信が持てないなら、昨年の中間選挙前後に米国の戦略石油備蓄(国家が維持する石油の緊急備蓄)がどうなったか見てみよう。
石油備蓄は40年ぶりの低水準に縮小している。バイデンは40年分の石油を市場に放出したのだ。これが、原油価格下落の一因となった。
アメリカは「エネルギー純輸出国」になることが可能だ。前政権下の2019年に初めてエネルギー面で自立した。しかし、アメリカの石油生産を拡大するための努力は、民主党の方針に反して苦しい戦いを強いられることになる。
石油の「供給」は深刻なハンデを背負うことになるだろう。一方で、需要の高波が世界中に押し寄せている。
「需要の急増」と「供給の減少」が重なった時、価格は高騰する。こうした話は経済学で一度は聞いたことがあるだろう。
【価格が10倍に】15年ぶりに到来した巨大トレンド?
昨年、原油は1バレル120ドルに。ガソリンは1ガロン5ドルに達した。その時、「原油やガソリンは高すぎる」そう思っていただろうか?しかし、今後数年間でさらに上昇する可能性がある。実際、一部のアナリストはすでに150ドル、200ドル、あるいはそれ以上になると予想している。
私は予言はしないが、いくつかの事実をお伝えしよう。石油は過去50年間に2度、1,000%上昇したことがある。
1973年、OPECはアメリカへの石油の禁輸措置をとった。石油はあるものの、アメリカへの輸送を拒否したのだ。その結果、石油価格は1バレル3.50ドルから40ドルに。数年間で1,000%上昇した。
同じようなことが1998年から2008年にかけて起こっている。世界の緊張が高まり、中国経済の成長によって、価格は1バレル12ドルから140ドルに。1,000%以上の上昇だ。
2年前、石油は1バレル50ドルにまで下落した。もし、石油が1,000%上昇するとしたら...今後10年間で、最低でも500ドルになるということである。いや、もっと高くなる可能性を秘めている。
「石油価格が500ドルになる」というのは、少し突飛な感じがするかもしれない。しかし、このようなことは、そう遠くない過去に2度起きているのだ。今後10年間で石油価格は高騰し、石油投資家に大きな恩恵をもたらす可能性がある。是非とも石油関連企業に注目してみてはいかだろうか。
P.S.
私が今、「買い」と分析する大手石油企業はこちらでも紹介している。
(※アルファ・インベスター創刊記念号の29ページでご紹介しています)
P.P.S
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