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ゼミの実践演習で学生が痛感したこと in 米陸軍士官学校

From:ジム・リカーズ

ジム・リカーズは、ウォール街で40年の経験を持つ金融・経済の専門家。地政学に精通している彼は、地理的な条件から、軍事や外交、経済を分析することを得意とする。実際、米国における彼への信頼は非常に厚く、CNBC、ブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナルといった世界的なメディアに数多く出演し、政治問題や経済の動向について提言を求められてきた。さらに彼は、ホワイトハウス、CIA、国防総省の元顧問である。2008年にはリーマンショックの発生を予測し、CIAに対して助言を行っていた。彼のもう一つの肩書きは、5冊のベストセラー本の著者。その著書には『The New Case for Gold』(邦題:いますぐ金を買いなさい)や『The Death of Money』(邦題:ドル消滅)がある。政府機関が信頼を置いてきた彼の予測や提言は、きっとあなたの金融知識の向上、ひいては資産形成にお役立ていただけるだろう。

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過去7年間、米陸軍士官学校で金融戦争に関するゼミを担当してきた。
 
ゼミの時間はいつも楽しく、やりがいがある。学生は元々とても頭が良く、一流企業なら誰もが欲しいと思うような、頭の切れる者ばかりだからだ。

実際、中小規模ビジネスの10社に対して1社の割合を元軍人によるスタートアップが占め、その総数はアメリカ全土で240万社にのぼるという調査もある。その売上は、総計11億ドル(約1,200億円)。雇用する従業員の数も500万人を超え、米国の経済を下支えしている。

出所:Military Times

ゼミには、陸軍、海軍、海兵隊、空軍、沿岸警備隊、国務省やCIAなどの民間人から、通常12名ほどの学生が集まっている。
 
多くが35歳くらいのミドルキャリアで、中には中佐や司令官、戦闘機パイロットなどの階級を持つ年配者もいる。
 
かつてゼミには、米海軍戦闘機兵器学校の「伝説」と呼ばれるパイロットもいた。

出所:Skies

仮想の金融戦争が現実に

学生たちは皆、高度戦略プログラムの一環として厳選された者たちだ。将来、戦闘司令部や国家安全保障会議などで高い指導力を発揮できるよう、急ピッチで育成されている。

2023年のゼミ開始はもうすぐだ。どのような展開になるのか楽しみにしている。この1年間、本当にいろいろな出来事があった。
 
過去を振り返ると、2022年のゼミが一番実践的であった。6年間仮想の金融戦争を研究してきたが、「ついに議論すべき現実の戦争が起きた」と学生たちに伝えた。

もちろん、ウクライナ戦争である。

「教授が一番物知りではない」

米国と同盟国のロシアに対する金融制裁は、極端で前例のないものだ。ロシアはSWIFTという国際金融通信システムから追い出された。制裁処置としては厳しい。

欧米との取引ができない相手として、ロシアの銀行、オリガルヒ、大企業の長いリストが挙げられた。リストの中には、ガスプロム(ロシアの大手天然ガス会社)まで。その上、バイデン大統領は、ロシアへの半導体やハイテク機器などの技術輸出を禁止した。

そういった背景から、ゼミでは戦争ゲームのシナリオではなく、現実世界の結果について議論できた。
 
制裁はロシアを抑止できず、経済的なダメージを与えられない。その上、米国に反撃を与え、世界における経済的地位を傷つけるようになるだろう。ゼミからは懐疑的な声が多く聞こえた。
 
しかし、ゼミは討論会形式で、対話と討論を重視する。疑問視する意見も問題ない。「教授が一番よく知っている」わけではないのだ。

ゼミはみんなの良さを引き出して、見落としがないようにするのが目的だ。ただ、現時点での展開は当初の分析通りとなっている。

ロシアのダメージは予測の7分の1

すべての制裁を合わせると、2022年のロシアのGDPは25%程度の減少になると予想する人が多かった。しかし、2022年のロシア経済は-3.5%にとどまった。予測の7分の1以下と、多くの人が予測したような崩壊には至っていない。
 
他の多くの「専門家」が見誤ったのに、なぜ制裁が効かないという予測ができたのか?
 
答えは、シンプルだ。ロシアはただ制裁を受けるだけのサンドバッグではないと知っていたからだ。これは昨年のゼミで話したことだが、偵察衛星やGPS追跡が可能な世界でも制裁を逃れることは容易である。
 
米国とEUは、ロシア産石油を購入する際の価格に上限を設定し、国際経済から締め出そうとした。この方法はうまくいっただろうか?

出所:毎日新聞

答えはノーだ。

「幽霊タンカー」の出現

というのも、制裁に関係なくロシアの石油を輸送する「幽霊タンカー」が出現したからだ。船団は、前の所有者から、名前も住所も不明な新しい所有者に売却された。

出所:ロイター

タンカーは航行中、GPSをオフにできる。運航会社はオフィスを頻繁に移転させることで尻尾を掴ませない。保険は自己保険プールやダミー会社を通して再保険を受けている。
 
必要なサービスはインドや中国など、制裁体制に参加しなかった国から調達できる。要するにロシアの石油輸出は、いくつかの書類上のハードルと仲介業者への手数料を除けば、通常通りのビジネスができるのだ。
 
同手法は1990年代、サダム・フセインとイラクが制裁の対象となっていた時期に、世界的に有名な商品トレーダー、マーク・リッチ氏がイラクの石油輸出を支援するために完成させた。リッチ氏はその過程で巨万の富を築いたことで知られている。

出所:Financial Times

イエレン氏は理解しはじめたか?

国際貿易と制裁処置を多く見てきた多くの専門家は、制裁を回避するのは簡単だと知っている。この単純なメカニズムを知らないのはジャネット・イエレン氏のような、政府のマユの中で全キャリアを過ごし、国際貿易の実経験がない愚か者だけだ。
 
おそらく、イエレン氏はようやく手がかりをつかんだのだろう。ドルを兵器化すれば、敵対国が代替手段を求める中で、ドルを破壊する結果になりかねないと認めている。私は10年前、国防総省と財務省にこの力学を説明した。

出所:Bloomberg

物理的な戦争が終わっても、経済戦争は続く。ロシアに限らず世界経済への影響は何十年も続くだろう。
 
現在でさえ、米ドルは決済通貨として世界中で広く使われなくなった。取って代わったのは、ルーブル、人民元、ルピー、その他の発展途上国通貨だ。

何年も前に予言していた

2009年、国防総省が主催した史上初の金融戦争ゲームに進行役として参加した。戦争ゲームは、ワシントンとボルチモアのほぼ中間に位置する応用物理学研究所内にある極秘の戦争分析研究所(コードネーム:WALRUS)で行われた。
 
これについては、2011年に拙著『通貨戦争』の第1章と第2章に執筆している。当時提示したシナリオは、ロシアと中国が大量の正貨準備を蓄積し、金をプールして、米ドルに代わって金に裏打ちされた新しいデジタル通貨を立ち上げるというものだった。

出所:アマゾン

そしてロシアと中国は、自国のエネルギーや製品を購入する際には、新しい通貨で支払うように要求する。ドルの覇権から抜け出し、ドルによる経済制裁から自らを守るための明確な取り組みだ。
 
そして、それは今日まさに起こっている。
 
ロシアの中央銀行は、外貨準備と金の保有高が6,000億ドルに達したと発表した。保有高は戦前の水準に300億ドル足りないだけで、さらに増え続けている。ロシアはかつてないほど最も強力な制裁体制に直面しながらも、驚く成果を上げている。

出所:The Guardian

今度のゼミでは、上記の点について、丁寧に説明したいと思う。そして学生たちが、実経験も知識もない輩が居座っているポストに取って代わることを期待している。

ゼミが終われば、その様子をまたお届けするかもしれない。

P.S.
メディアで度々取り上げられるウクライナ戦争…あなたはいくつ「真実」を知っているだろうか?

・戦争を仕掛けたのはプーチンである
・ロシアは経済制裁で大ダメージを受けている
・戦況はウクライナが優勢でロシアが劣勢である

これらは全てメディアによって作り出された“プロパガンダ”に過ぎない。真相は、こちらのページでご案内している動画にてお伝えしている。

>>真相を知る


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