【まとめ】"新生BRICS"が世界にどのような影響を与えるのか?「金融」と「海」を支配する巨大組織(+投資家へのアドバイス)
From:ジム・リカーズ
8月22日から24日まで、南アフリカのサントン・コンベンション・センターでBRICS首脳会議が開催された。
BRICSは、金融、外交、環境、女性問題、スポーツ、その他多くのテーマに関する会議を年100以上も開いている。しかし、加盟国のトップが参加する会議は年に1回だけ。また首脳陣が一堂に会すのは、今回が初めてであった。
出席したのは以下、各国のリーダーたちである。
加盟国の拡大が何を意味するのか?
この会議は、2010年以来の「BRICS加盟国拡大」という重要な決定で幕を閉じた。
以下、6カ国が2024年1月1日付で加盟することが決定。
ブラジルは当初、2つの理由からサウジアラビアの加盟を支持しなかった。
以上の2つである。インドはサウジアラビアの加盟には特に異論はなかったが、BRICSの新通貨の立ち上げは支持しなかった。なぜなら、同国は「ルピー」を貿易通貨として普及させようとしている。もし、BRICSの共通通貨が実現すれば、その努力が水の泡となるからだ。
そしてBRICS加盟国の拡大は、ペトロダラー時代の終わりが近づいていることを意味する。
特にサウジアラビアのBRICS加盟は、その大きな一歩だ。もしサウジアラビアがアメリカとのペトロダラー協定を破棄し、石油をドル以外の通貨で販売することを選択すれば、アメリカにとって大きな打撃となる。世界でのアメリカの影響力が弱まることになりかねないのだ。
そして、サウジアラビアのBRICS加盟は、BRICS新通貨にとっても大きな一歩となる。なぜなら、通貨同盟の規模を拡大することになるからだ。新通貨はより利用範囲が広がり、流動性のあるものになる可能性がある。
結局、インドとブラジルの反対はあったが、ロシアと中国が新たな国の加盟を押し通した。BRICSは、11の正会員を擁するBRICS+となり、より大きな政治力と新たな通貨統合への道を歩むこととなる。
BRICS+に残された2つの選択肢
加盟国の拡大により、BRICSの新通貨は来年には実際に使われるようになると予測している。というのも、現在のBRICS加盟国はもちろん、今後BRICSに加盟する予定の国々もまた、米ドルの武器化に苦しんでいるのだ。
近年ロシアで起こったように、ドル建ての外貨準備が米国によって凍結されるかもしれないという脅威にさらされている。個々の新興国が貿易において「自国通貨の使用を促進したい」と考えるのは当然のことだ。
だが、その努力は失敗に終わる運命にある。ただ貿易収支を記録する方法としては、ほぼすべての通貨を使うことができる。難しいのは「その通貨で何ができるか」だ。
米国、欧州、日本以外には、流動性の高い大規模な債券市場がない。そのため現時点における選択肢は、「ドルかユーロを使うか」(各国はこれを避けたい)あるいは「大きな通貨同盟を立ち上げるか」である。
海の支配を広げるBRICS+
BRICSの加盟国拡大が意味するのは、通貨同盟にとどまらない。
BRICSは、ハルフォード・マッキンダー(アジアを拠点とする世界島とハートランドの理論家)とアルフレッド・マハン(重要な海峡やその他の海上交通の要衝の支配を重視したシーパワーの理論家)の2つのビジョンに近づいている。
陸と海、両方の物理的支配を固めつつあるのだ。これはすべて、歴史にも時事問題にも無知なように見えるバイデン政権の目と鼻の先で起こっている。
新加盟国の加入と新通貨の発行は、切り離して考えることはできない。これらは共通のプロジェクトと言える。
加盟国の拡大こそが、新通貨の実現性を高めるのだ。BRICS+については、今後数日、数ヶ月のうちにさらなるニュースが発表されるだろう。
BRICS+の動向を注視し、新たな世界秩序とBRICSの新通貨について、あなたに一歩先をお伝えしていく。
通貨戦争が激化すればするほど、私たちはより多くの収益機会を得ることもできるだろう。そして、金とリンクする新しい通貨が開発されれば、金価格が高騰することが期待される。金鉱株の多くにとっては、素晴らしいニュースだ。
BRICSとその通貨については、今後数週間、数ヶ月のうちに新しいニュースや情報が出てくるはずだ。その際には、米国経済や株式市場への影響を分析した上で、新たなリポートをお届けしていく。