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【中国・ロシア・米国によるポーカーゲーム】"絶好のカモ"になっているのは…?

From:ジム・リカーズ

ジム・リカーズは、ウォール街で40年の経験を持つ金融・経済の専門家。地政学に精通している彼は、地理的な条件から、軍事や外交、経済を分析することを得意とする。実際、米国における彼への信頼は非常に厚く、CNBC、ブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナルといった世界的なメディアに数多く出演し、政治問題や経済の動向について提言を求められてきた。さらに彼は、ホワイトハウス、CIA、国防総省の元顧問である。2008年にはリーマンショックの発生を予測し、CIAに対して助言を行っていた。彼のもう一つの肩書きは、5冊のベストセラー本の著者。その著書には『The New Case for Gold』(邦題:いますぐ金を買いなさい)や『The Death of Money』(邦題:ドル消滅)がある。政府機関が信頼を置いてきた彼の予測や提言は、きっとあなたの金融知識の向上、ひいては資産形成にお役立ていただけるだろう。

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ウクライナがロシアとの戦争で苦戦を強いられていることは、これまで何度も情報を発信してきた。多くの米国人がロシアの大敗を信じているのも無理はない。米英メディアによる誤情報が氾濫しているのだから。

しかし、事実は異なる

20万人以上のウクライナ軍戦死者の墓標は、まるで母国の劣勢を象徴しているようである。ウクライナは多くの優秀な人材を失った。初歩的な訓練しか受けていない新兵を前線に送り込んでいる。彼らの多くは数日しか持ちこたえられないだろう。

一方、ロシア軍は新たに兵士40万人を追加採用中だ。戦地に派遣されている40万人に加えて、30万人以上の予備兵を動員することになると見ている。

出典:Bloomberg

また、ウクライナは弾薬も不足している状況だ。一方で、ロシアは弾薬の生産を劇的に増やしている。

出典:CNN

航空機、戦車、ミサイル発射装置など、あらゆる軍事装備において、ロシアは圧倒的に優位に立っているのだ。

自国の首を絞めるアメリカ

ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)からの新しい軍事装備と加盟国で訓練された新兵の後ろ盾により、この春にも大規模な反撃に乗り出すとみられている。ロシアを戦場に押し戻すための苦肉の策である。

一方で、ロシアもまた準備を進めている。そのため、もしウクライナによる反撃が実現したとしても成功する確率は低いだろう。では、もし失敗したらどうなるのだろうか?

米国によるロシアへの経済制裁はほとんど成果が出ていない。ロシアの通貨ルーブルはウクライナ侵攻前より強くなった。また2024年には、ロシアの成長率が米国を上回ると予測されている。

出典:Newsweek

米国はむしろ、ロシアよりも自国の首を絞めているのだ。ロシア中央銀行は最近、金の保有量が30トン増加したと公表した。

出典:Bloomberg

1年間横ばいで推移していたことから、金を購入しなかったというよりも公表を怠っていた可能性が高い。バイデン政権にとっては、またしても制裁の失敗だ。

さて、バイデン政権のウクライナ政策はさらに悪化の一途を辿るのだろうか?残念ながら、答えは「イエス」だ。

深刻な兵器不足

米国はウクライナに兵器を供給している反面、自国用の兵器を大量に消耗している。台湾や中東など他の緊張状態の地域で戦う準備がまったくできていない。

さらに悪いことに、米国は自国の産業能力が著しく低下。ウクライナに供給する兵器の代替兵器をすぐに生産できない。一夜で武器や弾薬の生産を開始するのは不可能である。第二次世界大戦時とは違い、もはや当時の産業経済など存在しないのである。

現代に通用するレベルの武器や弾薬を作るには、何年もかかるだろう。欧州も役に立たない。軍隊は単なる"見せかけ"で、兵器の生産能力は米国よりさらに低いのである。

地政学的な危機は、次のような時に起こり得るだろう。

・米国が深刻な景気後退に突入する可能性が高い時
・世界金融危機が顕在化している時
・米ドルが世界の決済通貨として急速に失墜している時
・軍部が戦闘技術よりも社会問題に対する価値観を重視し、新兵の採用数が目標に達しない時
・中国からイランに至る敵対国が米国の弱点を突く準備をしている時

ロシア、中国、アメリカ…一体誰が"カモ"なのか?

このような状況下で、米国の利益と権力を脅かすような事態が他の場所でも進んでいる。その最たるものが、先日モスクワのクレムリン宮殿で行われた中国の習主席とロシアのプーチン大統領との会談だ。

出所:CNN

各国の首脳による会談は、決して珍しいものではない。しかし、今回は単なる2国間の首脳会談ではなく、米国を排除した新たな世界秩序のお披露目パーティーだったのだ。

これをポーカーゲームに例えて説明しよう。他の重要な大国を軽視しているわけではないが、現状では米国、中国、ロシアが超大国と見なされている。

その3か国がポーカーゲームをしているとしよう。

ポーカーには古い格言がある。

"周りを見渡してカモがいないのなら誰がカモなのかは明白である。自分がカモであると思え"

三つ巴の戦いでは、二人が協力して三人目を負かすのが原則だ。3人目のプレイヤーが負ければ(すべてのチップを失えば)、生き残った2人は互いに集中することができる。

これがパワー・ダイナミクス(権力の力学)というものである。米国は、第二次世界大戦の終結以来、この力学を暗黙のうちに理解していた。

70年以上続く…超大国の"ポーカーゲーム"

冷戦時代、米国とロシア(当時のソビエト連邦)は国の存続を賭けた対立を繰り広げていた。中国は1950年代から1960年代にかけてはまだ大国ではなく、事実上孤立していたと言える。ロシアの強い同盟国でもなかったのだ。

しかし1970年代、中国の台頭を察知したリチャード・ニクソン大統領は、中国の孤立を解消。米国の同盟国とするために迅速に動き出した。

ソ連は1970年代に経済的に衰退。1980年代には政治的な衰退に見舞われた。そして1989年にはベルリンの壁が崩壊。1991年にソビエト連邦が正式に解体され、ロシア連邦が誕生した。

米国はブッシュ政権下で再び方向転換し、中国の権力を牽制するためにロシアを同盟国とした。

出所:George W. Bushホワイトハウスアーカイブ

当時、ロシアは民営化と民主化に向かっていた。一方で、中国では1989年に天安門事件、2001年に海南島事件が発生。経済は不安定になっていたため、この同盟はうまく機能した。

しかし、徐々にポーカーゲームの流れが徐々に狂い始める。

アメリカを"カモ"にする中国とロシア

1999年以降のプーチンの台頭は、米国の新保守主義者と進歩主義者の両方を激怒させた。彼らは、ロシアが西側の言いなりになることを望んでいたからだ。ナショナリストかつ熱心な宗教家であるプーチンは、ロシアをより伝統的な保守国家に戻したのである。

その後、2016年の米国大統領選では、ロシアは米国左派による非難の的となった。今日ではウクライナ戦争が発生。これは、ロシアを国際的枠組みから完全に排除するための口実となっている。

同時にアメリカは、中国が「我々と同じような国家になる」と思っていた。しかし、そうはならない。中国は共産主義の独裁国家と化し、旧ソビエト連邦よりも強敵となったのだ。

さて、現在のポーカーの戦況はどうだろうか。中国とロシアは緊密な同盟関係にある。対して、米国は孤立している。どうやらカモになっているのは米国なのかもしれない…

P.S.
著者のジム・リカーズについては、こちらで詳しくお伝えしています。

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