【ウーバー VS リフト】米国2大配車サービスの決戦…あなたはどちらに投資しますか?
From チャールズ・ミズラヒ
「勇気を持った一人の人間が、多数派を作る」
かつて、第7代アメリカ合衆国大統領のアンドリュー・ジャクソンはこう言った。
これは、時として勇気ある一人の言動が大勢の行動を変えることを意味している。彼の意見に賛成だ。これまでの人生の中で、一人の人間が与える影響力の大きさを目の当たりにしてきた。特に、「会社経営」に関しては…
しかし、多くの投資家は、最高経営責任者(CEO)は「電球」のような存在。つまり「交換可能」だと考えている。実際、保有している企業のCEOの名前さえ答えられない人がほとんどだ。
正直、私には理解できかねる。ビジネスの戦略を立て、推進し、資本配分を決定している人物のことを調べないなんてありえない。それが、株式のリターンに最も大きな影響を与える要素の一つにも関わらずだ…
デモ、性差別、社長の辞任…制御不能のウーバーイーツを救ったCEO
2017年、私はウーバー・テクノロジーズ (NYSE: UBER) に興味を持った。そのきっかけは、ダラ・コスロシャヒ氏が最高経営責任者(CEO)に就任したことである。
コスロシャヒ氏の就任当時、ウーバーはすでに世界有数の配車サービスだった。しかし、事業は制御不能に陥っていたのだ。世間では、反ウーバー運動として 「#DeleteUber 」というデモが発生。それにより、20万のアカウントが削除されたばかりだった。
また、元エンジニアのスーザン・ファウラー氏が、会社の女性差別文化を告発。
訴訟が相次いだ結果、前CEOが辞任する騒ぎとなった。
その後、コスロシャヒ氏が新CEOに就任し、社内を一掃。混乱はしたが、彼のおかげでウーバーのビジネスは徐々に好転していったのだ。
明暗が分かれたウーバーとリフト
ウーバーに入社以前、コスロシャヒ氏は旅行通販会社エクスペディアのCEOを務めていた。彼の指揮の下、同社の予約数は4倍以上に。利益も2倍以上に増加している。その結果、株価は600%以上上昇。S&P500の4倍近い上昇率を記録したのだ。
偉大なCEOは、一回の成功を他の産業でも再現することができる。そして、彼はまさにそれをやってのけた。2017年8月にウーバーCEOに就任。それ以来、企業文化を変革し、オペレーションを最適化。フリーキャッシュフローを生み出すことに尽力した。
競合であるリフト (NASDAQ:LYFT)とは異なり、ウーバーは配車サービスを提供するだけではない。レストランのテイクアウトを配達する「ウーバーイーツ」も提供している。日本だとこの事業のイメージが強いかもしれない。
ウーバーイーツは、ドライバーに"2つの稼ぎ方"を提供する。配車サービスのビジネスが低調の時はウーバーイーツで配達することができる。その逆も然りだ。これが新規のドライバーを引きつける大きな要因となっている。
また彼は、2020年初頭に62%だった市場シェアを74%に高めることに成功。一方、リフトのシェアは38%から26%に低下している。同じ業界であっても、業績が同じにはならないことを示す良い例だと言えるだろう。
2022年2月には、ウーバーとリフトの両社は数日違いで決算を発表。ウーバーは過去最高となる売上を報告した。一方、リフトはその数日後、減収、ガイダンスの低下、シェアの停滞を報告している。そして、その違いは株価にも表れているのだ。
2社の最大の違い…それは「経営者」である
配車サービス業界では、ウーバーとリフトがほとんどのシェアを占めている。とはいえ、その違いは明白だ。一方は競合他社の3倍のシェアを持っているが、もう一方は生き残るか否かの瀬戸際にいる。
そして両者の最大の違いは、経営者だ。リフトは、創業者のローガン・グリーン氏とジョン・ジマー氏によって運営されてきた。2人ともテック業界の起業家で、配車アプリで大成功を収めた実績を持つ。しかし、こと会社経営・事業の運営に関しては、見劣りする部分がある。
一方、コスロシャヒ氏はこの6年間、ウーバーを最前線で導いてきている。例えば昨年9月、ウーバーはドライバーの募集に遅れをとっていた。そこで彼は、机から離れ、中古のテスラを運転。「デビッド・K」という"覆面運転手"として働いたのだ。
ドライバーの気持ちを理解するためである。そして、ドライバーの不満はもっともだと気づいた彼は、現在この問題に取り組んでいる。
未来について何年も壮大な約束をしてきたリフトの創業者たちは、社長とCEOを退任することを発表。一方、コスロシャヒ氏は、株主価値を高め、最高のビジネスを構築することに集中している。彼のような人物と一緒にビジネスをしたいと思わないだろうか?
世界に変革をもたらした偉大なCEOたち
優れたリーダーシップは、どのような業界であっても、企業に大きなアドバンテージを与えてくれる。コスロシャヒ氏のような偉大なCEOは、好不況を問わず、企業を成功に導くことができる。あるいは、CEO一人の決断が、数十億ドル規模のアイデアに発展し、世界に革命をもたらす可能性もあるのだ。
例えば、アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏。彼は、コンピューターは技術重視ではなく、ユーザーフレンドリーであるべきだと考え、それを実現するアップルコンピューターを発表した。
また、自動車会社フォード・モーターの創設者ヘンリー・フォードは、労働者の賃金を2倍にアップ。最高の人材を自動車製造に投入することを決定した。
彼らが取った決断は、今思えば簡単なこと、あるいは些細なことに思えるかもしれない。しかし、その一つの決断が長期的に株主の大きな利益につながったのだ。
賢いCEOが適切なタイミングで正しい決断をすることで、小さな会社を数十億ドル規模の巨大企業に変貌させることができる。そして、投資家を大金持ちにする可能性もあるのだ。ぜひとも投資判断をする際には、その企業を率いるCEOに注目してみていただきたい。
P.S.
こちらではウーバー・テクノロジーズのように、偉大なCEOが率いている優良企業をご紹介している。