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資産を閉じ込める「お金の牢獄」…その脅威から逃れる方法とは?

From:ジム・リカーズ

ジム・リカーズは、ウォール街で40年の経験を持つ金融・経済の専門家。地政学に精通している彼は、地理的な条件から、軍事や外交、経済を分析することを得意とする。実際、米国における彼への信頼は非常に厚く、CNBC、ブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナルといった世界的なメディアに数多く出演し、政治問題や経済の動向について提言を求められてきた。さらに彼は、ホワイトハウス、CIA、国防総省の元顧問である。2008年にはリーマンショックの発生を予測し、CIAに対して助言を行っていた。彼のもう一つの肩書きは、5冊のベストセラー本の著者。その著書には『The New Case for Gold』(邦題:いますぐ金を買いなさい)や『The Death of Money』(邦題:ドル消滅)がある。政府機関が信頼を置いてきた彼の予測や提言は、きっとあなたの金融知識の向上、ひいては資産形成にお役立ていただけるだろう。

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バイデン・バックス」。

これは現在、政府が準備している中央銀行デジタル通貨(CBDC)を指す私独自の言葉である。

出所:paytm

実はこのバイデンバックスが、昨今の銀行危機に深く関係している。今日はその関係性についてお伝えする。

銀行破綻の本質

口座がCBDCであろうと普通の預金預金であろうと、それほど大きな違いはない。今日の銀行の危機は、行動学的な観点からは1930年代と全く同じである。

その根本原因は、自信の喪失、取り残される恐怖、噂、口コミなど人間の心理的要因によるものだ。 これは、14世紀、1345年頃にバルディ銀行とペルッツィ銀行が破綻して以来、変わらない人間の本質である。

出所:wikiwand

唯一変わったものと言えば、テクノロジーだ。1960年代、文明批評家のマーシャル・マクルーハン氏は、こんなことを言っていた。

「地球村では、誰もが同時にすべてを知っている」

出所:Marshall McLuhan

彼は正しい。1930年代と違い、今では預金を取り戻そうと店頭に殺到する必要はない。iPhoneを取り出し、数回タップすれば、個人間送金アプリのVenmoであろうと送金であろうと、お金は金融機関から出ていく。

1,000ドルの個人預金者であろうと、80億ドルの大金持ちであろうと、誰もがオンラインで一度にお金を動かせるのだ。

CBDCであろうと、Venmoであろうと、送金であろうと、ATMからの現金引き出しであろうと、デジタルチャネルを通じて誰もが同時にキャッシングできる。しかしCBDCには、従来の方法とは一線を画す大きな違いがある。 

お金の牢獄

取り付け騒ぎが発生した場合、政府はCBDCの口座送金を凍結するだけで騒ぎを止められる。また、過去の送金を取り戻すことも可能である。

政府はCBDCの台帳を管理しているので、早期引き出しがどこに行ったかを確認できる。そして破綻した銀行の口座に戻し、譲り受けた人の口座から引き落とすだけで良いのだ。すべては数回のキー操作で実行可能である。

つまりバイデン・バックスが導入されると、政府が管理するシステムに人々は閉じ込められることになる。まるでお金の牢獄にいるかのようだ。

政府が動きを追跡し、お金を元の場所に戻せるため、取り付け騒動を始めることさえ意味がない。バイデン・バックスは、人々のお金を政府が完全に管理し、考えや行動を監視できる方法の1つである。
 
中央銀行のデジタル通貨で世を支配するために、現金は遅かれ早かれ排除されるだろう。個人をCBDCの世界に強制的に引き込むためである。そして米ドルのCBDCが近いうちに登場する。良くも悪くも市民がCBDCの強制使用を回避する唯一の方法は、金、銀、暗号資産になる。
 
金や銀とビットコインを比較するのは、魚と自転車を比較するのに似ている。つまり意味がない。金は「お金」であり、ビットコインは幻覚剤のようなものである。
 
これまで米国財務省、FRB、その他の主要な金融機関は暗号資産を敵視していた。そして、彼らはようやくその対処策を見つけたのである。それが、暗号資産を消し去ることだ。

暗号資産はカジノのチップである

もちろん、ビットコインやその他の暗号資産には、取引所、デリバティブ、ペイメントチャネル、ティッカーなど、独自のエコシステムがある。しかし、関係ない。なぜなら、暗号資産はカジノのチップのような存在だからだ。

チップを使ったギャンブルであれば、儲けたり損したりすることできる。しかし、チップをポケットに入れたまま外を歩けば、どうだろう?チップは無価値になる。

つまり、チップの価値は、カジノの中でのみ有効なのだ。外でお金を使おうと思ったら、まずキャッシャーに行ってチップを換金する必要がある。キャッシャーは暗号資産の世界から現実のお金の世界への入り口である。
 
だからこそ、SVBが経営破綻した3月12日、FDICはシグネチャー・バンクも管理下に置いたのだ。シグネチャー・バンクは、他の多くの銀行よりも悪い状況ではなかった。もし翌日の3月13日まで破綻せずにいたら、米国の銀行システム全体とともに、FRBの銀行定期資金調達プログラム(BTFP)によって救済されていただろう。そのような状況下で、なぜシグネチャー・バンクは叩かれたのか?

出所:Bloomberg

それは「シグネット」という暗号世界への入口を運営していたからだ。FDICが包括的な預金保証を発表し、FRBが債券を額面通りの現金と交換する無制限の能力を提供すれば、シグネチャーは他の銀行同様、問題なかったはずだである。

イエレン氏はパニックを利用して、シグネットを一掃したに過ぎない。ラーム・エマニュエル氏が述べたように、危機を無駄にする必要はない。これは、暗号資産が世界的に抑圧されることを示す一例である。そしてCBDCは、暗号資産に代わるデジタル通貨として設立されつつあるのだ。 

出所:The New Yorker

金没収は再び起こるか 

金に関しては、投げ売り、市場操作、協調などで短期間の価格操作は可能である。しかし、それらのテクニックは持続可能ではない。
 
実際、ロンドンで金価格安定操作を行なってきた金プール制は1968年に廃止された。また、英国のゴードン・ブラウン財務相は、1999年に国の金のほぼ半分を50年ぶりの安値で売却した。「ブラウンの底」と呼ばれる悪名高い価格操作として知られている。

しかし、どちらも操作により最後には必ず失敗することを示す良い例である。政府は1933年の金没収を再び試みるかもしれない。しかし、今回は政府の約束が信用されないのでうまくいかないだろう。
 
というのも1933年の金没収においては、フランクリン・ルーズベルト大統領が何をしているのか国民は分かっていた。そして彼や国民には世界恐慌を終わらせようという信念があったのだ。

しかし、今日は誰も政府を信用していない。新型コロナウイルス時のワクチンやマスクは、政府がいかに嘘をついていたかを示す良い例であった。
 
今日のルールは「二度と騙されるな」。おそらくまだマスクをつけている民主党議員を除いて、誰も金を明け渡さないだろう。
 
金の没収がうまくいかないもう一つの理由は、金の価格が1933年のように固定されていないからだ。1933年の金1オンスあたり20ドルから35ドルへのドル切り下げは、予想した人がほとんどいなかった。

その金価格の上昇(実際にはドルの切り下げ)は、没収の数か月後まで発表されなかったのだ。これはルーズベルト大統領による究極のインサイダー取引だったのである。情報通の市民は、2度目は引っかからないだろう。 

今日のように、為替レートが固定されていない市場では、危機が先に訪れる。政府が没収を試みる前に、金は1オンスあたり5,000ドルや1万ドル、あるいはそれ以上の水準に達するだろう。その時点ですでに手遅れで、金の所有者は利益を手にする。 

ドルに代わる選択肢として、金と暗号資産を選ぶという危機的状況を、一般の米国人はどのように評価するだろうか?

暗号資産は政府から叩かれているか?イエス。
金は長期的に操作可能か?ノー。 

これらの問答は、ドルの崩壊をどう生き延びるかという大きな問いに大変役立つだろう。

〜編集部より〜
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