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米国『中央銀行デジタル通貨』は暗号資産をねじ伏せるのか

From:ジム・リカーズ

ジム・リカーズは、ウォール街で40年の経験を持つ金融・経済の専門家。地政学に精通している彼は、地理的な条件から、軍事や外交、経済を分析することを得意とする。実際、米国における彼への信頼は非常に厚く、CNBC、ブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナルといった世界的なメディアに数多く出演し、政治問題や経済の動向について提言を求められてきた。さらに彼は、ホワイトハウス、CIA、国防総省の元顧問である。2008年にはリーマンショックの発生を予測し、CIAに対して助言を行っていた。彼のもう一つの肩書きは、5冊のベストセラー本の著者。その著書には『The New Case for Gold』(邦題:いますぐ金を買いなさい)や『The Death of Money』(邦題:ドル消滅)がある。政府機関が信頼を置いてきた彼の予測や提言は、きっとあなたの金融知識の向上、ひいては資産形成にお役立ていただけるだろう。

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中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、これまで何度も話をしてきた。

その米国ドル版を私は「バイデン・バックス(ドル札)」と呼んでいる。CBDCは大いなる脅威である。

デジタル通貨(だが暗号資産では無い)。つまりプログラミングすることが可能なのだ。財務省とFRBはあなたの購入したもの、政治的な関わり、信仰宗教などを追跡できる。米国の敵、または極端なドナルド・トランプ崇拝者かもしれないと、監視の目を光らせるのだ。

バイデン・バックスによって、あなたが1週間に購入するガソリンの量が追跡され、制限がかかる。

バイデン・バックスを使えば、あなたがその時点でどこにいるかもわかってしまう。

だが、これだけでは終わらない。

出所:Getty Images

最悪なコンビ?CBCD+AI

CBCDを使った分析は人工知能(AI)と生成型大規模言語モデル(GPT)を取り入れることにより、あなたの心を読めるレベルに達する。

そうなれば、銀行口座の凍結、増課税、懲罰が容易となる。例えば、財政刺激政策によって30日以内に使われなかったお金は罰として一部没収されるようなことが起きるのだ。

あまりに極端で、あり得ない事に聞こえるかもしれないが、そんなことはない。

すでに世界中で起こっている事なのだ。

中国ではすでにCBDCが使われており、中国政府の反体制派の移動手段や学習の機会を奪っている。

出所:BBCニュース・ジャパン

昨年冬、カナダ政府は抗議デモを行った非暴力的なトラック運転手の銀行口座および暗号資産を凍結した。

この手の『社会信用』システムと政治的弾圧はバイデン・バックスが全米に展開される事によってエスカレートするだろう。

AP通信は事実確認をしようと私に説いた。あなたの主張は間違いではないか。デジタル・ドルは社会統制とは何ら関わりはない。この計画は無害であり、政府を信用すべきだと。

しかし、『中央銀行の中央銀行』とも言われる国際決済銀行(BIS)のマネージャーですら、CBDCによって中央銀行は全国民の金銭に絶対的統制力を持つ事になり、テクノロジーはそれを促進するであろうと認めている。

ザ・エコノミスト誌ですら、政府によるデジタル通貨は「主権を国民から政府に移すだろう」と忠告している。

競争のない通貨

これはCBDC計画の中核である:CBDCドルが施行されるにあたって、政府は国民の逃げ道を塞ぐ必要がある。主な3つの逃げ道は紙幣、金、そして暗号資産だ。

現金はすでに多くの場で不便さを増している。公共の場では『現金取扱なし』の表示が多くみられ、資金洗浄の抑制、単にインフレであるという状況も現金の使用を控えさせている。だが、手元の現金の額は知れているだろう。

(1969年に米国政府は500ドル札を廃止し、100ドル札が最も多くなった[比留間6] 。1969年の100ドルは、インフレの結果現在では12ドルの価値である[比留間7] 。数年後にはたった5ドルの価値になるかもしれない。)

暗号資産への

出所:Getty Images

攻撃も容赦ない。米国証券取引委員会(SEC)は大手暗号資産取引所であるバイナンスと創始者のチャンポン・ジャオを『欺瞞の網』に関与したとして告訴した。

13の容疑の中には、取引量の誇張表示、ユーザー資金の不適切な流用、投資家の市場監視管理について誤った情報を与えたなどの主張が含まれている。

SECはこの直後、同じく大手暗号資産取引所のコインベースを未登録で証券を販売したとして告訴している。

3月初旬、銀行危機の真っ只中で、連邦預金保険公社(FDIC)はシグネチャー銀行を閉鎖した。同行は通常の銀行業務に加え、シグネットと呼ばれる暗号資産のポータルを運営していた。直前に破綻したシルバーゲート銀行も同様に暗号資産の取り扱いを行なっていた。

偶然ではない。

だが政府の狙いはブロックチェーンの消滅ではない。掌握なのだ。

米国は暗号資産に対して全面戦争を仕掛けた。シルバーゲート、シグネチャー、バイナンスそしてコインベースは手始めにすぎない。CBDCへの移行を完璧に行うには、暗号資産を潰す必要がある。

ビットコインやその他の暗号資産を強く支持する者は、デジタル資産は「政府の手が及ばない」、「追跡不可」、「凍結や没収が不可能」であるとヤワなことを言っていた。

彼らはそうでないことを学んだだろう。ブロックチェーンはイーサリアムなど特定の暗号資産の中に存在するわけでも、隠れているわけでもない。政府が管理するサーバー、通信ネットワーク、バンキングシステム、電力などの主要なインフラに依存しているのだ。

何度も言ってきたが、政府は暗号資産の基盤となっているブロックチェーンを消滅させるのではなく、掌握したいのだ。

政府は紙幣の増刷を独占している。特権を暗号資産に侵害されてはたまらない。

だが、暗号資産の基盤となっている技術やプラットフォームを止めることができないことは百も承知だ。ブロックチェーンテクノロジーの進化は著しく、後戻りすることはできない。政府は利用する道を選んだのだ。

出所:Getty Images

CBDCの安全性

バイデン・バックスの計画には穴がある。トレーサビリティのあるデジタル通貨の使用を強制された場合、それを安全に格納しておけるのか。

ハッカーたちは常に暗号資産の構造をターゲットにし、盗もうと考えている。デジタル通貨も同様にハッキングされる可能性があるのではないか。

以下は、2022年にFRBが公開したものだ:

既存の支払いサービスへの脅威―運用上の混乱やサイバーセキュリティのリスクを含めて、CBDCも同様である。CBDCのための専用インフラは、そのような脅威に対して非常に強靱である必要がある。また、CBDCインフラの運営者は、より高度な手法で侵入しようとするハッカーに対し常に警戒する必要がある。CBDCの適切な保護対策を開発することは特に困難だと考えられる。なぜなら、CBDCネットワークは既存の支払いサービスよりも多くの入り口を持つ可能性があるからだ。

なんと恐ろしいことか。

ハッカーが暗号資産のプラットフォームに簡単に入り込むことができるのであれば、より入り口の多いCBDCネットワークへの侵入をどのように阻止するつもりなのか。

バイデン・バックと戦うのは簡単ではないかも知れない。だが、デジタルでない、ハッカーと無縁な、トレーサビリティの無い価値にあなたはまだ手が届く。

金だ。手遅れになる前に、少しでも懐に入れておいてはいかがか。

〜編集部より〜
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