利下げを喜ぶアメリカ両党。迎える景気後退
今年は選挙の年だ。
そして今、米国金利は高いままで、2006年以来の高水準を記録している。
選挙と金利には、何か関係があるのだろうか?
連邦準備制度理事会(FRB)はその関係について「ノー」と言っている。
しかし、これまでの歴史を見れば「イエス」と言うほかないだろう。
FRBは常に高度な政治的存在である。ただ、それを悟られないように上手く隠しているだけなのだ。
今回はそれらの関係についてお話ししよう。
FRBの政治的干渉の歴史
例えば1972年、当時のFRB議長であったアーサー・バーンズは、ニクソン元大統領が再選を果たすことの一助となる、通貨供給量の増加を行なった。
結果的にその政策は功を奏し、ニクソンは得票率 23.2%という大差で勝利を収めている。
直接的な要因ではないにしろ、その政策が勝利に一役買ったのは間違いない。
では、現在のFRBはどうだろうか。
今年の大統領選挙に対するFRBの影響について語る前に、最新の選挙情勢について簡単に触れておこう。
トランプ氏の圧倒的勝利
1月15日(米国時間)のアイオワ州党員集会でトランプ氏は記録的な勝利を収めた。
これによって、2024年の共和党大統領候補が同氏になることは、ほぼ確実と言えるだろう。
トランプ氏の得票率は51%を獲得。2位のロン・デサンティス氏に30%の差をつけた。アイオワ州99郡中98郡でトランプ氏が勝利したのだ。
これまでのアイオワ州での1位と2位の記録は、1988年に樹立された13%差だったため、圧倒的な支持が見て取れる。
裏目に出る民主党
また、これまでも繰り返してきたが、民主党はトランプ氏の選挙資格を剥奪しようと画策している。
というのも、メイン州とコロラド州で、同氏は選挙候補から外された。
現在、その問題は連邦最高裁に上訴されており、判決が覆ればその2州でも復帰する可能性が高い。
もし、最高裁が判決を覆した場合、民主党のトランプ氏排除への行動は卑怯だとみなされ、同氏への支持は逆に上がることになるだろう。
残念ながら、民主党の行動は裏目に出る結果となりそうだ。
では、今年の大統領選挙におけるFRBとその潜在的役割に話を戻そう。
現FRB議長はトランプ反対派?
ジェイ・パウエルFRB議長はトランプ氏と同じ共和党員だが、筋金入りのブッシュ派の共和党員だ。
このブッシュ派は、民主党と同様に同氏を軽蔑している。つまり、同氏は共和党員でありながら、トランプ氏を嫌っているのだ。
現在、民主党トップの一人である急進派のロー・カンナ氏は、バイデン大統領が選挙に有利となるよう金利の引き下げを要求。
同氏は、もしパウエル議長が金利を引き下げなければ、「トランプを再選させた張本人になるだろう」と非難した。
利下げを喜ぶ米国両党
パウエル議長は切れ者であるため、今回の大統領選に直接巻き込まれることはないはずだ。民主党の口車に簡単に乗ることはないだろう。
現在は、慎重にその行く末を見ている。
しかし、金利を下げるかどうかについてはわからない。
実際、パウエル議長は6月か7月頃に利下げに踏み切る可能性がある。
この行動は、バイデン氏およびトランプ氏とは関係なく、米国経済が深刻な景気後退を迎えることが要因となる。
今年の夏に利下げを行なった場合、民主党に対しては「選挙前の利下げ」という面で満足させ、共和党には「不況をもたらした」という面で満足させるだろう。
FRBは政治に全く関係がないわけではい。 ただ単に、慎重に立ち振る舞い、その痕跡を残さないのが上手いだけなのだ。
我々は、こうした政策の背景にある情報を仕入れ、社会情勢の中で不利にならないよう、備えておく必要があるだろう。