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ペンタゴンの嘘がおよそ100年ぶりの米国-ロシア抗争を示唆している

From:ジム・リカーズ

ジム・リカーズは、ウォール街で40年の経験を持つ金融・経済の専門家。地政学に精通している彼は、地理的な条件から、軍事や外交、経済を分析することを得意とする。実際、米国における彼への信頼は非常に厚く、CNBC、ブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナルといった世界的なメディアに数多く出演し、政治問題や経済の動向について提言を求められてきた。さらに彼は、ホワイトハウス、CIA、国防総省の元顧問である。2008年にはリーマンショックの発生を予測し、CIAに対して助言を行っていた。彼のもう一つの肩書きは、5冊のベストセラー本の著者。その著書には『The New Case for Gold』(邦題:いますぐ金を買いなさい)や『The Death of Money』(邦題:ドル消滅)がある。政府機関が信頼を置いてきた彼の予測や提言は、きっとあなたの金融知識の向上、ひいては資産形成にお役立ていただけるだろう。

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3月後半の記事の見出しは、世界的な銀行危機の話題で占められた。

シルバーゲート銀行、シリコンバレー銀行(SVB)、シグネチャー銀行が相次いで破綻。ファースト・リパブリック銀行とクレディ・スイスも救済措置が必要であった。今後、さらに多くの銀行が破綻するのは間違いないだろう。

しかし、銀行危機は注目すべきニュースの1つに過ぎない。

それよりもさらに重要なニュースとして、ウクライナ戦争が挙げられる。軍事侵攻は2年目に突入。着実に第三次世界大戦と核による消滅への道を進んでいる。にもかかわらず、十分な注目を集めていないというのが現状だ。

米露間の緊張

最近、クリミアに近い黒海上空で、ロシアの戦闘機2機が米国の無人航空機(ドローン)を攻撃した事件があった。

出所:BBC NEWS Japan

ロシア軍機が燃料を放出しながら、後部にあるプロペラに接近し攻撃を行ったと見られる。当然プロペラはズタズタになり、ドローンは海に墜落。これからより詳細な報道が出てくるだろう。

米軍の大型ドローン「MQ9リーパー」

ペンタゴンの嘘

ロシア側は、ドローンが飛んでいたのは、ロシアの領空内または領空近くだったと主張している。だが米国から見れば領空侵犯にはならない。米国はクリミアをロシア領と認めていないからだ。

米国防総省が公開した飛行追跡図には、黒海の真ん中で、ドローンが監視任務を行っている様子が描かれていた。そもそも黒海の真ん中で任務を行う理由はない。そのため、国防総省(ペンタゴン)の嘘である可能性が高いと見られる。

ドローンが撮影した映像には、クリミアに非常に近い場所を飛行していた証拠がはっきりと残っている。黒海の真ん中ではないことは明らかだ。

上の2枚の写真には、背景に陸地が写っている。下の1枚の写真は、クリミア半島で問題となっているエリアを照合するために撮影した写真だ。

事件当時に撮影された上の2枚の写真は、決定的な証拠になるだろう。下の写真と見比べてみてほしい。ドローンは、黒海の真ん中を飛行していないことがわかる。明らかにクリミア沖で任務を行っていたのだ。

なお、ドローンは、航空機を識別するための通信を切った状態で飛行していた。これは国際航空ガイドラインに違反する行為である。

米国は中立ではない

ロシアのパイロットが米軍のドローンを追撃したことに異論はないだろう。ロシア側が発砲したわけでもなければ、米国側のドローンに人が乗っていたわけでもない。しかし、米軍機とロシア軍機が機体が破壊される形で直接接触したのは今回が初めてだ。

では、この米露間の緊張は予想外のものだろうか。

米国はドローンなどを使って情報収集していた。その情報をウクライナに伝え、ロシア軍の不利になるように支援していた。つまり、米国は戦争の交戦国であり、ロシア軍にとって合法的な標的なのだ。

リンジー・グラハム米上院議員は、真実を伝えていない。「卑劣なロシア人が米国のドローンを墜落させたとき、米国はただ監視任務に専念していた」と主張している。国民にでっち上げを信じさせたいのだろう。グラハム氏は、米国が国際水域でロシアの航空機を撃墜することを望んでいることは明らかだ。

しかし、国防総省は、問題としてこの事件をそれほど大きく取り扱っていない。同様の事件がいつどこで起こるか、誰にもわからないのだ。

およそ100年ぶり…冷戦に次ぐ米国・ロシア抗争

今回の事件は、米国とロシアの関係悪化の始まりに過ぎない。

そして、ウクライナのゼレンスキー大統領は、米国のF-16戦闘機の供与と、さらなる米国の軍事介入を要求している。

米露両者とも、お互いを非難しあっている。しかし、ある時点で、どちらが仕掛けたのかよりも、戦況を深刻化自体に執着するようになるだろう。

ここで、あるシナリオを想定しておこう。ロシアが決定的な勝利を収め始め、ウクライナが崩壊寸前まで追い込まれたとする。

ウクライナが直面している深刻な弾薬不足を考えれば、決して非現実的な話ではない。特に砲弾が不足しており、NATOはこれ以上渡すことができない。一方、ロシアの工場は24時間体制で砲弾を生産している。

戦争は数のゲームだ。そしてロシアには数がある。遅かれ早かれ、それは戦況に現れるだろう。

では、そのときバイデン政権とNATOの同盟国はどう出るのだろうか。プーチン大統領を呼び出して、「ロシアの勝ちだ」と言うだけだろうか?

あり得ない。米国はすでにウクライナに多くの資源と威信を投入しており、評判がかかっている。この代理戦争でロシアに完敗すれば、ベトナム戦争以来、どんな地政学的失敗よりも大きな戦略上の挫折となる。

核戦争への危機

ロシア勝利目前となれば、同盟国は絶望的な手段に頼るかもしれない。例えば、人道的な口実でウクライナ西部に軍隊を派遣するなどが挙げられる。ホワイトハウスと同盟国は、民間人に対するロシアの戦争犯罪を防ぐためだと主張し、派遣を正当化するかもしれない。口実はいくらでも作れるだろう。ただし、ロシア軍との直接的な衝突の引き金になるのは間違いない。

ポーランドがウクライナ西部に軍隊を派遣するかもしれない。ロシア軍に対抗するよう、バイデン大統領と同盟国は、強く「奨励」するかもしれない。

ポーランドが米国の次の代理人になるかもしれないのだ。ちなみに、ポーランドの指導者は、米国よりもさらに反ロシア的である。代理人候補としてポーランドはあり得ない話ではない。

今の段階で、必ずしも全てが予測通りになるとは限らない。しかし、可能性は十分考えられる。ウクライナが戦争に勝つことは現実的ではなく、ロシアが勝つほうが確率は高いのは確かだ。親ウクライナのメディアでさえも、そのことに気づき始めている。

問題は、それが現実となった場合、どう対処するかだ。

戦争ゲームも理論も歴史も、エスカレーションが核戦争につながることを指摘している。

米国は1945年8月6日と9日、歴史上唯一の核戦争を行った。油断すれば、次の核戦争が忍び寄ってくるかもしれない。しかし、核戦争の危機に気づいている人はほとんどいないのだ。
 
大惨事となる前に、米露両者が自制することが緊急の課題だと言えるだろう。

P.S.
著者のジム・リカーズについては、こちらで詳しくお伝えしています。

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